いのち弾ける!

 雨降りの日曜日、私が好きな画家の一人中川一政の画文集「いのち弾ける!」を開いてみました。骨太な彼の絵、そして朴訥だが魂にひびく言葉。世の中なべて効率病に冒されている現代、わたしたちの言葉や行為の原点とは一体何なのだろうかと、一瞬正気にもどしてくれます。

この林檎は美しいな!此梨の色は渋いな!
この籠の線はかっちりしているな!
この果物入はどっしりしているな!
この様な感嘆詞「な!」から始まります。
此感嘆詞「な!」こそは幻想の子。
此子を育ててゆけばよいのです。

私は異説をたてているのではない。
美しいから生きているのではない。
生きているから美しいのだと。
一生懸命に云っているのだ。

私は思った。貧乏なんて生きている間のことだ。死ねば跡形もない。
その古武士のような顔、鍛錬された骨格の立派さに感動した。
このままいつまでも置いておきたい。
私は火葬場から、その骨壷を抱いて車にのった。
まだ熱い骨壷の上に涙がおちた。
私はこの父を愛しているのだ。この父から生まれた事を誇りに思うのだ。