盛岡出身で昭和23年に夭折した松本竣介は私がとても好きな画家です。
彼は彫刻家の舟越保武と旧制盛岡中学校で同級生であり生涯を通しての親友でした。
松本竣介の絶筆となった「建物」に舟越保武は彼の画文集「巨岩と花びら」で短い追悼文を寄せました。
私はこの文章ほど深い友情を感じる追悼文を他に知りません。
この絵は東京国立近代美術館にあります。
その年の秋、都美術館で、私は竣介の絶筆「建物」の前に立った。
絵の下に、小さな黒いリボンがつけてあった。そのリボンにそっと手をふれたとき、こみあげる惜別の情があった。
絵の中の白い建物、教会に似たこの建物の右側にある暗い入り口から、竣介が入って行ったのだと思った。
白い服の竣介が手をふって、「暗くなった。かえろう」と言って。
故郷盛岡の岩手県立美術館には二人の作品が隣り合わせの部屋に展示されています。
亡くなった二人が今でも交流しているかのように。