もう一つの気持ち

 先日会合があり、久しぶりに代行運転で家に帰りました。運転手さんが「道教えて下さい」といいます。変だなと思ったら「私、仙台から助っ人で来てますので」ということでした。
 60歳ぐらいの方なんですが仙台で個人タクシーをされているそうです。話を聞いているうちにびっくり!

 3.11の日に蒲生にある自宅は流され、奥さんと一人娘を亡くされたそうです。娘さんは25歳で、ロンドン留学中でありましたが、偶然帰郷していたんだそうです・・・

 運転手さんのその日のあれこれを聞いてて言葉もありませんでした。

 そして言うのです。「震災から4ヶ月くらいはボランティアの人に感謝をしつつ、やっかみの気持ちが抜けなかった。この人たちはこんなお手伝いできる身分なんだろう、と。自衛隊の人たちにも、どうせしごとだからやってるんだろう、と」

 あまりにも自らがみじめで、いやな気持ちと思いつつも、やむなくわきあがる思いだったそうなんです。そんな気持ちを同じ被災者同士で語りあったりもしたそうです。

 支援金は月6万円、食費で終わり、避難所や仮設住宅での不自由な暮らし、腐乱した遺体を探す日々・・・

 ようやくそんな気持ちから抜け出せたのは二ヶ月前くらいからだと言いました。

 「女房が貯金を残してくれていた。ローンの残金もない。二種免許や個人タクシーの営業権がある。なんて私は恵まれているんだろう。他のひとに申しわけないようだ」という気持ちになってきたんだそうです。

 私は被災者の気持ちを100分の1も実感できないでいるのだと強く感じました。「がんばろう」という言葉がはずかしくて言えなくなりました。

 でも、必ず何かさせていただきます。