江戸へのタイムトラベラー

 やはりそうでした!杉浦日向子さんは現代にいた頃、江戸へのタイムトラベラーだったんです。ちゃんと本人が書いてます。相対性理論もエントロピーの法則も実は絶対じゃないんです。
 光速より速い粒子がありそう、という話題で最近にぎやかです。それがほんとだとするとタイムマシンが可能かも?

 でももうひとつ、熱力学の第二法則(エントロピー増大の法則)も覆されないと、タイムマシンはできないらしい。

 「そんなの関係ない!私はとっくに時空旅行者です」とカミングアウトしていたのが、2005年、あの江戸時代へ片道切符で最後のタイムスリップをした杉浦日向子さんです。

 「江戸アルキ帖」の82ページに、ちゃんと証拠を残しています。

 江戸への移行時には、もう何の抵抗もないが、江戸からこちら側へと戻ると、着衣のまま湯へ入ったような違和感が一時的に残る。いわゆる時差ボケだが、自分の場合、一方向間だけのものだから、ちょっと問題だ。

 いったい彼女はどんなふうにして江戸を観察していたのでしょう?

 江戸の町は、戸外に「生活」がはみ出しているから「旅行者」でも楽に「観察」が可能と言われている。確かに、低い塀からは家事のすべてがうかがえるし、常に開け放たれた戸口からは昼寝の足裏や猫の欠伸(あくび)まで見える。

 なるほど。でも思いがけないことですが、彼女の上手もいるらしい。

 けれど、この頃は日帰りが限度の三級が物足りない。「住んでみたい」と思ってから、時差ボケは、ますます強まっているようだ。

 一級の所持者は、横丁の隠居や八卦身、俳諧師等に身をやつして、数年にわたる長期滞在をしていると聞く。

 四谷の寺の門で、うたた寝をしていた「附け木売り」の爺さんもソノ手かもしれない。附け木なんか、全部売れても数文にしかならない零細な商いだ。もしも私が一級だったらいかにも浮世離れした、こんな渡世を選ぶだろうと思った。

 私は絶対、日向子さんは「戯作者」か「浮世絵師」になってると思うんです。もしかしたら「式亭三馬」か「歌麿」は彼女じゃないかと疑っているんです。今、amazonから本を取り寄せ調査中です。

 私たちは「トラベル」って「水平移動」だけと考えがちです。でも「垂直移動」のトラベルもあると面白いなと私は思うんです。

 「垂直トラベル」って、もしかしたら「肉体移動」ではなく「頭脳移動」、その乗り物は「想像力」、旅のガイドは「読書」かも。

参考
 杉浦日向子の「ケータイ観」
 夏祭り、浴衣、江戸の町