平成の「浮世風呂」

 平成の「浮世風呂」、それは「市民プール」です。というより併設されているジャグジーとサウナが「浮世風呂」みたいな趣です。江戸も今もあまり変わらぬ光景かもしれません。

(杉浦日向子さん「江戸アルキ帖」より)

 私は時々市民プールに通っています。股関節が悪いので歩行訓練のためなんです。

 私が行く時間帯はお昼ごろ。平日のその時間帯にプールに来ることができる方々といえば。。。

 そうです。推定年齢65歳以上の「老老男女」がほとんどです。

 なかには、推定30歳代、40歳代の女性も少数ながらまじっています。

 市民プールのジャグジーやサウナは男女混浴(?)でありますが、みんな水着着用ですからお互いあまり目の毒にもならず。。。

 みんな水辺の生き物みたいにしてリラックスしています。

・・・・・・・・

 実は3.11の震災で、私が通うこのプールも被害を受け、今年の二月にようやく再開したばかりです。


(北斎漫画より)

 ほぼ一年間、閉まっていたわけですが、再開してみるとあれこれ感じることがあります。

 プールと言っても、泳ぐ人より歩く人のほうが多いんです。どっか、体に問題があってリハビリのようにして来る人が三分の一くらいはいます。

 その中で、震災前まで必ず出会った「サウナの女王」が再開後は一度も顔を見せていないんです。

 「サウナの女王」とは、私が勝手に付けたニックネームなんですが、その方は70歳少し前くらいかな?どうも大きな手術をされた方のようで、サウナの一番奥にいつも寝そべっていました。もちろんたまにプールにも入ります。

 再発予防のためにプールやサウナで体力を鍛えようとしていたに違いありません。いったいどうしたのでしょうか。。。

・・・・・・・・

 ある男性もみかけなくなりました。その方は糖尿病から腎臓を悪くし、透析を受けていたんですが、そんな感じは一切与えない豪傑タイプのおもしろい方でした。

 この方は、背のひょろんとした相棒爺さんとよく一緒に来ていました。

 私はかってに「弥次喜多さん」と名前を付けていました。


(北斎漫画より)

 その道中二人組も来なくなりました。。。少し心配です。

・・・・・・・・

 もうひと組「新弥次喜多コンビ」がいまして、こちらはすばらしい!年齢以外は若者と同じです。トレーニング量の多いこと多いこと!水泳の達者なこと!

 サウナでは、この弥次喜多さん同士、時々おばさんも話に交じって自家菜園の農作業話です。実にためになりそうです。私の将来に。

 それにしても弥次喜多コンビは相棒同士に共通点があるものです。

 片方はずんぐりむっくりの「だるま」。もう片方は背が高い「仙人」。


(北斎漫画より)

 まるでスター・ウオーズの「R2D2」と「C3PO」のコンビです。

 この組み合わせは、宇宙的ゴールドカップルなのかもしれませんね。

・・・・・・・・

 さて、お昼時はおばちゃんたちの水泳教室が終了し、冷えた体を温めようと、まるで(あざらし)の大移動のように、ジャグジーやサウナに向かってきます。

 そこからのお話はやはり「食べ物」

 ま〜、聞いていると実に面白い!

 「このプールに軽食喫茶あるといいのにね〜」

 「私、プールでおなか空くからついつい食べ過ぎるのよね〜。この前も賞味期限切れそうなまんじゅうあったから、ふたつもおなかで処分しちゃったわ」

 あとは、あそこの店がうまい、あの食べ物がうまい、ま〜八割がた食べ物の話ですな〜

 ジャグジーだって普通には入っていません。昇降用の手すりに背をもたせ、あるいはへりに寝ころび、自由奔放カッパ天国です。

 サウナでは大股広げ、あるいは寝っころび体操、まったく天真爛漫「浮世風呂」です。

 あ、そうそう、今年から教室の先生が若い男性に代わったせいか、みんなウキウキして、先生に手取り足取りされたことを自慢げに話す光景にもよく出会いますな〜。

・・・・・・・・

 ま〜、かくいう私は平成の「式亭三馬」といったところでしょうか。

 いや、ぜひ彼にあやかりたいものだと、日々つたないブログで修行中であります。