シネマ歌舞伎「高野聖」

 歌舞伎と映画のコラボはすばらしい!玉三郎さんの演技には実に感動しました。ひとつひとつの動作に含まれた「おんな」のエッセンスが、様々なアングルでよりリアルに表現されています。映像ならではのことです。
 シネマ歌舞伎ホームページ http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/19/

 「高野聖」は、明治後期から昭和初期にかけて活躍した文豪「泉鏡花」の代表作といわれる中編小説です。

 主演の坂東玉三郎さんは「泉鏡花」の大ファンだということで、このシネマ歌舞伎では、物語が始まる前に玉三郎さんの「泉鏡花」の作品解説があります。

 私もこの小説が大好きで、何度も読んでますが、とてもおもしろく情景が活き活きと想像できる中編小説です。

 明治の頃、この物語の筆者が、とある旅籠で同宿した旅僧から、彼が若い頃の修業時代に経験した怪異かつ妖艶な話を聞くという設定です。

 奥飛騨の旧い山道に入ってしまった僧が、蛇やひるに悩まされてたどりついた山奥の一軒家、そこには上品であでやかな女性と白痴の若い男、手伝いの親仁の三人が住んでいました。

 一夜の宿を借りた僧が経験した奇怪かつ妖艶な出来事とは?

 

 私はよく、この「魔性のおんな」を演じられる女優はだれだろうか? と考えて、様々な映画やドラマを見ていることがありました。

 一番の候補は歌手の藤あや子さんだと思いました。あの流し目の妖しさ、結婚した男性が二人も亡くなるという不幸に耐えたたくましさなど、イメージが重なります。

 そのほか、宮城県出身の鈴木京香さんや、同じく宮城県涌谷町出身の若松孝二監督「キャタピラー」で主演をつとめた寺島しのぶさんも合うかなと思います。(少し同郷びいきですな。藤あや子さんも秋田県だし・・・)

 ぜひ、だれか映画にしてくれたらいいのにと思っていましたが、小説のイメージが壊れるのも心配でした。

 それが。。。あの「玉三郎」さんで映画になったとは! 思いもしませんでした。

 しかし大当たりでした。

 玉三郎さんは、この「おんな」についてこう語っていました。

 「高野聖の『おんな』は特定の「『おんな』ではないと思います。見る人によっていかようにも見える『おんな』(そのもの)だと思います」(意訳)

 だからこそ「おんな」そのものの本質を表現する極みに達した玉三郎さんが適役だったわけです。

 あらゆる動作において、その「角度」「時間」「方向」「流れ」「間」というものが芸術的に完成されています。

 ほかの役者も上手い!

 修行僧役の「中村獅童」もいいですが、親仁役の「中村歌六」が実にうまい!

 外国のシェークスピア劇や、シェークスピア劇の舞台俳優が主演の映画も実にいいのですが、シネマ歌舞伎はさらにすばらしいと思います。

 それは原作や「話芸」のすばらしさだけでなく、「所作」(ふるまい)のすばらしさもいっしょだからです。

 皆さんも、お近くの映画館で上映されていたらぜひご覧になるといいですよ。

 それと、この小説は著作権が切れていますから、i−phoneとかにも無料でダウンロードできます。ぜひ原作もどうぞ。

 http://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/521_20583.html

参考
 読書の匂い
 読書について
 一番心あたたまる短編
 ケストナーと美智子様
 夏目漱石の永遠の恋人
 この世は巡礼である