人間にも万有引力が働いている。恋人同士が惹かれ合うのもそのせいだ。寺山修司が何かに書いていたのを覚えています。朝しゃがんで新聞を読んでいると、天野祐吉さんのコラムにいつも自然と目が行きます。万有引力で惹かれ合っているとしたら実に光栄です。
CMデザイナーやコピーライターは、職業柄さすがに視点や切り口が際立っています。
天野祐吉さんもそのお一人。けっこうなお歳なのにその感性の瑞々しいこと!
人生というものが、このような波長の合う方々と暮らして行けたら、どんなに楽しいことだろうかと思います。
さて、天野さんは朝日新聞のコラム「CM天気図」で、原発に関して何度もその「変だな?」かげんについて書いています。
決して大上段にかまえず、一般庶民の目線で。さりげなく。しかし粘り強く何度も。
今朝のコラムもそのひとつです。
ここで紹介しようと思ったのは、最近感じるこんなことからです。
政権発足時はジュダイと思っていた民主党の面々。しかし政治のダークサイドに抗えず、みんなダースベーダーになっていく。。。
政治経済という力の抑圧、権力へのあこがれ、原子力村のクローンの群れ、原発というデス・スター。。。
スターウォーズが現実の話のように思えて、空しくなる日々が続きます。
朝日新聞 2012.4.11
天野祐吉「CM天気図」より負けるもんか
「負けるもんか」というホンダのCMがいい。「負けるもんか」という言葉がいい。
終始、中ロングでとらえた静かで即物的な映像もいい。
タテ一列に並んだホンダの歴史的なクルマたち。それをうしろから前へ、カメラはゆっくり映していく。で、ナレーション。
「頑張っていればいつか報われる。持ち続ければ夢は叶(かな)う。そんなのは幻想だ。たいてい努力は報われない。たいてい正義は勝てやしない。たいてい夢は叶わない。……けれど、それがどうした。スタートはそこからだ。新しいことをやれば、必ずしくじる。腹が立つ。だから寝る時間、食う時間を惜しんで何度でもやる。さあ、きのうまでの自分を超えろ。きのうまでのHondaを超えろ」
すると、並んだクルマの先頭にいたNSXコンセプトが、ゆっくりと動き出す。で、白い画面に、「負けるもんか」という文字が現れて終わる……。
ホンダが「負けるもんか」というときには、失敗に負けるもんかとか、競争相手に負けるもんか、ということだろう。が、いまこの言葉は、「頑張ろう」とか「きずなを大切に」と言った言葉より、確実に人びとに響く。届く。
津波や原発事故の被害にあわれた人たちだけではない。この国はいま、人それぞれにそれぞれの問題をかかえて、「負けるもんか」という思いを抱いているときじゃないか。そんな思いに、このCMの「負けるもんか」という言葉は、まっすぐ届いてくるのだ。
たとえば、脱原発のために「頑張ろう」と言う人よりも、原発の再稼働を強引に進めようとする人たちに「負けるもんか」と言う人のほうが、ぼくはなぜか一緒に飲みたくなっちゃうんだよね。
一年前には天野さんのこんなコラムもありました。
「原発のない社会」→amano.jpg
あ、そうそう私も天野さんと似たようなことを最近書きました。やはり万有引力のせい?
→「戦う」と「闘う」
私めも、あらゆることに「負けるもんか」という「闘う」気持ちを強くしていかねばと思いました。
参考(天野祐吉さん関連)
ジョブス・モモ・ジュダイ
ゆでガエル現象への警告