大きい制服の新入生へ

 ここ東北、宮城にもまもなく桜が咲きそうです。二日前から暖かくなってきました。今こそ咲かん、と薄く色づく桜のプロムナードを、こちらも初々しき新入生が学校へ向かいます。すこし緊張した面持ちで。
 私の子にも、私にも、私の親にもあったこんな日。

 すこし大きすぎる制服を着て通学する新入生を見るたび、自分や娘のあの日を思い出します。

 思い出すな〜。私が小学校に入学した51年前のあの日。

 実は入学初日に、隣の席の生徒に、買ったばかりのランドセルをナイフで何カ所も切られてしまったのでした。

 その子は貧乏でワルでした。

 中学を卒業してすぐに就職したんですが、勤め先で傷害事件をおこし、少年院だったか刑務所にも入りました。

 ところが、42歳の小学校の同級生が集まった年祝いでは、女の同級生たちに大もてだったんです。

 もうひとり、かなりスローなゆきおちゃんとともに。

 →ゆきおちゃん

 きっと二人には、どこか母性本能を刺激する要素があったのでしょう。

 昔も今もある「いじめ」。

 でも、私たちの幼少の頃は「いじめる」ではなく「ひづる」といって、ちゃかす・いじるというような感じでした。

 今では陰湿な「いじめ」が多くなってきたようで、大きな問題になっています。

 でも新入生諸君、負けるな!

 いじめている子は、きっと君がまぶしくて好きなんだよ。

茨木のり子「自分の感受性くらい」より

むかし女のいじめっ子がいた

意地悪したり からかったり

髪ひっぱるやら つねるやら

いいイッ! と白い歯を剥いた


その子の前では立往生

さすがの私も閉口頓首

やな子ねぇ と思っていたのだが

卒業のとき小さな紙片を渡された


ワタシハアナタガ好キダッタ

オ友達ニナリタカッタノ

たどたどしい字で書かれていて

そこで私は腰をぬかし いえ ぬかさんばかりになって


好きなら好きとまっすぐに

ぶつけてくれればいいじゃない

遅かった 菊ちゃん! もう手も足も出ない

小学校出てすぐあなたは置屋の下地っ子


以来 いい気味 いたぶり いやがらせ

さまざまな目にあうたびに 心せよ

このひとほんとは私のこと好きなんじゃないか

と思うようになったのだ

参考(茨木のり子さんの詩を引用してあるブログです)
 茨木のり子「球を蹴る人」
 茨木のり子「行方不明の時間」
 茨木のり子「友人」
 店の名
 久しぶりに茨木のり子さん
 人生の季節
 倚りかからず
 ロートル・ネット・シンドローム
 「鍵」を探し続ける日々
 年々かたくなる、からだと心
 ふと心をうたれた詩