私の住む町、宮城県涌谷町の「涌谷国保病院」には「東洋医学外来」という診療科があります。高齢の父は夏が大の苦手ですが、ここで処方された漢方薬でなんとか身体を維持しています。
米寿の父は、老化のせいで年々身体や頭が弱っていきます。
昨年のお盆明けは、残暑のせいで急に元気がなくなり、とても心配しました。
そこで、この病院の内科で診てもらったんですが、内科でも漢方を処方してくれまして「八味地黄丸」をもらって帰りました。
ところがその晩、この漢方薬を一服服用しただけで見違えるようになったのです!
次の日の朝、今まで具合悪かったことなどケロリと忘れ、まるで「万能感」にひたったような感じになったのです。
ま〜、一日で劇的な効果は収まってしまいましたが、それでもジワジワと効果を発揮し元気を取りもどしていきました。
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そして今年の夏がまたやって来ました。
「八味地黄丸」である程度健康は保っているのですが、それでも完全というわけにはいかないようです。
そこで今年は「内科」から「東洋医学外来」に診療科を替えてみました。
驚くのは問診票。数十ページにも及ぶのです!
診察時間もたっぷり。先生は内科の医師でもあり、東北大学で漢方薬の研究もしている先生です。
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私がびっくりしたのは新たに追加処方された薬です。
「麦門冬湯(バクモントウトウ)」という漢方薬なんです。
これを調べてみると、父の症状とは直接何の関係もない薬のようなんです。
「のどを潤し、咳をしずめる作用」というんですが、父は咳など出ないんです。
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ところがです!
それから二週間ほど服用してみたら、これが症状に良く合って、食欲が衰えず元気を回復してきたのです。
さすが、漢方の専門家は見立てが違います!
なぜこの処方かというと、父は水分が足りない状態らしく、この漢方薬は保湿クリームのように内臓の粘膜の湿度を保ってくれるそうなんです。
漢方薬の奥深さの一端をかいま見た思いがしました。
さらに嬉しいのは先生のこの言葉。
「飲み続けると、もっともっと調子が良くなってきますよ」
普通の薬(西洋薬)は飲み続けると悪影響が出ますが、漢方薬はもともと生薬から作られているせいもあり、食品に近い安全性があるんですね。
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さて、先日再診の折、先生から講演会のご案内を受けました。
「一か月に一回、計7回シリーズで私が講演することになりました。「生薬の魅力」というテーマです。この病院の講堂で明日ありますから、良かったら来てください」
畑仕事と三度の食事以外、別にすることとてない父を連れて、翌日講演会に行きました。
会場には百名くらいの参加者。
第一回のテーマは「気虚体質」についてでした。「気虚」に効く食べ物やツボのお話もあり、とても参考になりました。
「気」とは「エネルギー」のことで、「虚」とは「欠乏」を意味します。
ですから「気虚」とは「元気が足りない」という状態を言います。
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先生のお話でなによりも記憶に残ったのは「漢方の実にシンプルな考え方」でした。
たった四つだけなんですね!
「冷えているなら」「温める」
「熱ければ」「冷やす」
「足りないなら」「補う」
「滞っているなら」「巡らす」
この当たり前の四つについて、様々な漢方薬が長い長い時間をかけて生み出されてきたわけです。
ちなみに「漢方」とは「日本で育った東洋医学」であり、中国の東洋医学は「中医学」といって、ルーツは同じでも別な医学ということのようです。
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「漢方」の考え方は「人生」や「経営」についても応用できそうだな〜と思います。
状況を把握して「不足」「不十分」のものやことを補うこと。
あらゆることで流れ(伝達)を良くしていくこと。
これらは「無理のない人生」「無理のない経営」につながっていくのではないでしょうか?
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エネルギーの不足を「国の『気虚』」ととらえればどんな解釈が成り立つでしょう。
今までの医師(政治・経済界)は「原発」という「猛毒の薬?」で「気虚」を解決しようとしてきました。
しかし、この薬は大変な危険性があることを皆が知りました。
優秀な漢方の先生なら、賢明な患者なら、こんな薬で「気虚」を直そう、直してもらおうと考えるでしょうか?
他の処方を絶対に考えるはずです。望むはずです。