茨木のり子「落ちこぼれ」

 世の中には「思いがけない真実」がいっぱい!「実は落ちこぼれの方が多い」というのもそのひとつ。だって一番以外の人は皆「自分は落ちこぼれ」と思っているんですから。

 (→アインシュタインも落ちこぼれだったらしい)

 「落ちこぼれ」って、何か人間的ですばらしい!

 「一番じゃないとだめなんですか?」

 「いいえ、独創的なら順番なんか関係ないんです。似たもの同士だけが無益な順番競争をするんです」

 茨木のり子さんからの応援歌です。

茨木のり子『おんなのことば』より

落ちこぼれ

 落ちこぼれ

   和菓子の名につけたいようなやさしさ

 落ちこぼれ

   いまは自嘲や出来そこないの謂(いい)

 落ちこぼれないための

   ばかばかしくも切ない修業

 落ちこぼれにこそ

   魅力も風合いも薫(かお)るのに

 落ちこぼれの実

   いっばい包容できるのが豊かな大地

 それならお前が落ちこぼれろ

   はい 女としてはとっくに落ちこぼれ

 落ちこぼれずに旨(うま)げに成って

   むざむざ食われてなるものか

 落ちこぼれ
 
   結果ではなく

 落ちこぼれ
  
   華々しい意志であれ


 「落ちこぼれないための ばかばかしくも切ない修業」

 これって、今の学校教育「エスカレーター乗り方教室」のことですよね。

 「落ちこぼれずに旨(うま)げに成って むざむざ食われてなるものか」

 これって、学校時代は親のため、勤め時代は会社のため、社長になったら株主様のため、いったいいつが俺のため?ということですよね。

 「能力」ではなく「性能」ばっかし求めていると、結局「使われる価値」ばっかりが上がっていく。

 そんな(高性能犬型ロボット)人間になろうとしていませんか?あなたは。

 と問いかけている詩です。

  →「能力」と「性能」の違い

 そして最後の行で嬉しいエールです。

 「落ちこぼれ 華々しい意志であれ」

 だって、みんなひとりひとり、かけがえのない「人間」だもの。。。

参考(茨木のり子さんの詩やお話を引用してあるブログです)
 茨木のり子さんが好きな詩
 茨木のり子「木は旅が好き」
 お休みどころ
 みんな子供の頃があったんだよな〜
 大きい制服の新入生へ
 茨木のり子「球を蹴る人」
 茨木のり子「行方不明の時間」
 茨木のり子「友人」
 店の名
 久しぶりに茨木のり子さん
 人生の季節
 倚りかからず
 ロートル・ネット・シンドローム
 「鍵」を探し続ける日々
 年々かたくなる、からだと心
 ふと心をうたれた詩