茨木のり子「聴く力」

 村上春樹さんは、尖閣問題で「安酒の酔い」という表現で領土問題が国民感情をあおる危険性について指摘しました。そうするとシンタロウ氏は安酒居酒屋のオヤジでしょうか?「作家」にも様々なレベルがあるようです。
 「・・・安酒はほんの数杯で人を酔っ払わせ、頭に血を上らせる。人々の声は大きくなり、その行動は粗暴になる。論理は単純化され、自己反復的になる。しかし賑(にぎ)やかに騒いだあと、夜が明けてみれば、あとに残るのはいやな頭痛だけだ。・・・」
 自己反省も込めて、茨木のり子さんの詩を載せたいと思います。

茨木のり子『おんなのことば』より

聴く力
         
 ひとのこころの湖水
 その深浅に
 立ちどまり耳澄ます
 ということがない

 風の音に驚いたり
 鳥の声に惚(ほう)けたり
 ひとり耳そばだてる
 そんなしぐさからも遠ざかるばかり

 小鳥の会話がわかったせいで
 古い樹木の難儀を救い
 きれいな娘の病気まで直した民話
 「聴耳頭巾」を持っていた うからやから

 その末裔(すえ)は我がことのみに無我夢中
 舌ばかりほの赤くくるくると空転し
 どう言いくるめようか
 どう圧倒してやろうか

 だが
 どうして言葉たり得よう
 他のものを じっと
 受けとめる力がなければ

参考(茨木のり子さんの詩やお話を引用してあるブログです)
 茨木のり子「私のカメラ」
 茨木のり子「落ちこぼれ」
 茨木のり子さんが好きな詩
 茨木のり子「木は旅が好き」
 お休みどころ
 みんな子供の頃があったんだよな〜
 大きい制服の新入生へ
 茨木のり子「球を蹴る人」
 茨木のり子「行方不明の時間」
 茨木のり子「友人」
 店の名
 久しぶりに茨木のり子さん
 人生の季節
 倚りかからず
 ロートル・ネット・シンドローム
 「鍵」を探し続ける日々
 年々かたくなる、からだと心
 ふと心をうたれた詩