悲しい仕事

 私が通う床屋の息子さんは、同級生が福島第一原発で働いています。ときどき連絡を取り合っているようで、私が散髪に行くと、息子さんはよくその話をしてくれます。
 あの日、「ベント」するためには蓋についている錠を外しに行く決死隊が必要で、その人員を募る現場の苦悩など、当事者にしかわからない話も聞いたことがありました。

 とはいっても「のど元過ぎれば」(の錯覚)で、最近は原発話も少なくなってきました。

 一昨日、久しぶりに同級生の近況を聞かせてもらいました。

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 数多い福島第一原発の問題で、今もっとも深刻なことの一つは「人がいない」ことのようです。

 多くの作業員の累積被曝量が上限を超えたために、ベテランがほとんどいなくなってしまったのです。

 「いったいまともな作業が継続できるのだろか?」と、同級生も心配していたそうです。

 ところがその同級生はといえば、震災前から現在まで長期間にわたり、今でも福島第一原発で勤務を続けています。

 彼の場合は、「現場」から被曝量測定の「バックヤード」へ異動になったおかげで、勤務を継続できているようです。

 「現場で働く人」は、いや、「現場で働ける人」はとても限られてきているようです。

 さらに今年はじめからは「危険手当」がなくなるなど、待遇面も全体的に悪くなり、ずいぶん愚痴っていたようです。

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 さて、このブログを書いたのは、この後とても「ショッキングな話」を聞いたからです。

 「そんな職場にいると彼の家族も心配だね」と私が尋ねました。

 「いいえ、彼はまだ独身なんです」

 床屋の息子さんは話を続けます。

 「でも彼は、『結婚しても子供は作らないと決めている』と、以前から語っていました。。。」

 「あの職場では、もともとそんな覚悟の人が多いそうです」

 私はこの後何も言えませんでした。。。

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 そして今、たまらずこのブログを書いています。

 そんな悲しい仕事がこの世にあるのかと。。。