アフリカのジュース工場

 いくらコストが安いとはいえ、みんな無人化したら、人はどうやってお金を得るのでしょう?
 19世紀初頭、産業革命後合理化一直線のイギリスで、職を失うことを恐れた労働者が工場の機械化に猛反対し、機械を壊す暴動を起こしました。

 「ラッダイト運動」として、歴史の教科書にはかならず載っています。産業革命の反動として否定的に。

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 しかし、この運動は決して過去のものではないでしょう。

 いや、19世紀以上に熾烈なコスト競争を強いられている現代社会にとってこそ、より深刻な問題かもしれません。

 加えて、いつのまにかTPPクラブに入らされ、グローバル化が一気に加速しそうな今、21世紀のラッダイト運動が日本でも起きてくるやもしれません。

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 企業というものは、極端に言うなら労働者0人(労務コスト0円)で生産したい。それを追求することが経済的善であると思っている節があります。

 それこそが資本主義だ、と思ってあきらめている人は多いでしょう。

 しかし。。。

 「仕事のために人がある」のでしょうか?

 「人のために仕事がある」のでしょうか?

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 アフリカ・ナイジェリアのオレンジジュース工場の話を知りました。

 この話を参考にして、「私たちにとって仕事とは?」について再考してみたいものです。

 文中の「藤村さん」は「非電化工房」を主宰する発明家です。

  →「非電化工房」見学会

「ゴージャス」と「シャビイー」のどちらが幸せか
『愉しい電力自給自足生活』より

 現在、藤村さんはナイジェリアでオレンジジュース工場の計画を進めている。

「ナイジェリアではオレンジが大量に採れますが、保存ができないので腐らせています。一方でオフシーズンにはオレンジジュースを輸入している。国内にオレンジジュース工場を作れば、産業になるし雇用も生まれるという状況です。でも当初は、電化された工場にまっしぐらでした。工場の中でロボットがオレンジをサツと運んで、皮を剥いて果汁を搾り出し、殺菌してパックを作る。人間が誰もいないところで、あつという間にオートメーションで作ってしまう。プロモーションビデオを見れば、日本人だってびっくりするくらいのゴージャスな工場を作ろうとしていた。


 そこで、政治家も含めていろいろを職業の人に現地で集まってもらって、僕がアンチテーゼとしての話をしました。

 まず、今ある案はゴージャスだけど、建設するにはお金と技術が必要だよね、それはどこからくるのって聞いた。先進工業国に、お金を貸してあげるよ、技術も教えてあげるよ、だからすぐに作れるよつて言われていないかい、と。そこで、これまでの経験を思い返してほしい。いろいろな工場を作ったとしても、他の国にマーケットができれば、すぐに撤退してしまっていないかい。残ったのは借金と失業者だけじやないかつて。

 何よりも失業率が60%以上の国なのに、全自動にする必要があるのだろうか。全自動の巨大な工場を作っても雇用は生まれないよね。一部の人は儲かるかもしれないけど、それじゃ貧富の差が広がるだけじゃないか。殺菌だって、全自動で高温殺菌するには多くの電気を使うことになる。人口の50%の人が電気のない生活をしている国に、そんな工場が本当に必要なのかと。

 次に僕の案を話しました。僕の案は、絞るのは手動の絞り機、そして太陽熱を使って殺菌をする。電気はほとんど必要としないし、たくさんの手間がかかるけど、それは雇用にもつながる。何よりも電気とケミカルに頼ることは、環境を破壊することにもつながるんだ。僕が提案するのは、非電化の工場。『シャビイー(みすぼらしい)』かもしれないけど、先進工業国の世話にならないで自分たちでできる、雇用も生まれる、と。

 そして、決めるのは君たちだ。全自動でゴージャスな工場と非電化のシャビイーな工場とどちらがいいか、みんなで決めてくれといいました。そうしたら全員、涙を流しながら非電化にするって決めたんです。よく考えた結果、テクノロジーに幻惑されて幸せを見失ってしまう可能性が大きいってことが分かったんだと思う。このオレンジジュース工場は、政治状況もあってなかなか進展はしていませんが、電気と幸せを考えるいい例です」

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 先日テレビで見たんですが、コロンビアの「スピード写真ボックス」は、なんと!コインを入れるとカメラが(本来)あるべき位置にあるカーテンが開いて、カメラを構えた人が出てきて写すんです。

 コロンビア国内に数十箇所もこのボックスをチェーン展開している社長さんはこう言っていました。

 「日本に行ったときスピード写真ボックスを見てこれだ!と思った。それで外見は日本とそっくりにしてある。なぜ人が入っているかって?私は人の雇用を増やすことが仕事だと思っているからさ」

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 3.11を経験した私たち世代が、一人ひとりそれぞれの暮らし方や価値観を変えなければ、政治も社会も経済も何も変わらないことでしょう。

 その変わらないシステムとは、私たちがぼんやりと、こう思いはじめているシステムのことです。

 「たぶん、ほとんどの人が幸せになれないシステム」