茨木のり子「さくら」

 茨木のり子さんの詩です。「あでやかとも妖しとも不気味とも」、さくらは実に奥深き花です。。。
 南から北へ巡業を続ける「さくら一座」をどの地方の人も心待ちにしています。

 東北、宮城に一座がやってくるのはあと一週間ぐらいしてからのようです。

茨木のり子『おんなのことば』より

さくら

 今年も生きて

 さくらを見ています

 ひとは生涯に

 何回ぐらいさくらをみるのかしら

 ものごころつくのが十歳ぐらいなら

 どんなに多くても七十回ぐらい

 三十回 四十回のひともざら

 なんという少なさだろう

 もっともっと多く見るような気がするのは

 祖先の視覚も

 まぎれこみ重なり合い霞(かすみ)だつせいでしょう

 あでやかとも妖しとも不気味とも

 捉えかねる花のいろ

 さくらふぶきの下を ふららと歩けば

 一瞬

 名僧のごとくにわかるのです

 死こそ常態

 生はいとしき蜃気楼と


 どんな人も、永遠にさくらを見続けることはできません。

 私も、あと何回さくらを見ることができるのだろう。。。と、ふと考えてしまいます。

 そして遠い未来の日本でも、さくら一座の巡業が続いていればいいな〜思います。

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参考(茨木のり子さんの詩やお話を引用してあるブログです)
 茨木のり子「はじめての町」
 茨木のり子「娘たち」
 茨木のり子「聴く力」
 茨木のり子「私のカメラ」
 茨木のり子「落ちこぼれ」
 茨木のり子さんが好きな詩
 茨木のり子「木は旅が好き」
 お休みどころ
 みんな子供の頃があったんだよな〜
 大きい制服の新入生へ
 茨木のり子「球を蹴る人」
 茨木のり子「行方不明の時間」
 茨木のり子「友人」
 店の名
 久しぶりに茨木のり子さん
 人生の季節
 倚りかからず
 ロートル・ネット・シンドローム
 「鍵」を探し続ける日々
 年々かたくなる、からだと心
 ふと心をうたれた詩