オランダのユニークな洪水対策

 「国土強靱化計画」なにか物騒な感じがする言葉だな〜と私は感じてしまうのです。強固な要塞都市国家をめざしているような。そのエンジンである原発には数十メートルの巨大な防波堤を張り巡らして。。。
 国土の大半が海面と同じかそれより低いオランダは常時洪水の危険と隣り合わせです。

 そのオランダで行われている洪水対策とは?

 『子どもとあそぶ家づくり』という本を読んでいてとても参考になる文章に出会いました。

 著者の鈴木明さんは、「家づくり」を「生きることの原点」としてとらえ、様々な「手作りの家」を工夫している建築デザイナーです。

 参考になったオランダの洪水対策の話を紹介いたします。

 まず最初は、あたり前?の土木的な対策です。

 数十年前、オランダ全土を大洪水が襲い、何千という命が奪われたという。・・・

 ・・・大洪水の後、オランダはふたつの対策を講じたといわれる。

 ひとつは、主要な道路をすべてかさあげして堤防化すること。道をクルマで走っていると両側の家々が低いところにあるのがわかる。洪水が襲ってきたとき、道路が水を堰き止めるのだ。自然の脅威に対して土木的な治水、すなわちハードで応えようという策だ。

 参考になるのはここからでして、なんとスパルタの水泳教練を彷彿とさせるようなお話が続きます。

 ところがオランダはピューリタン国家だから、力だけではなく理知的に対応しようとする。それがもうひとつの対策、「国民皆泳教育」だ。洪水に襲われたらじぶんの力で泳ぎ、じぶんで身を守れ、というのだ。これは教育によるソフトな対策である。

 オランダの小学生は、最高学年に達すると着衣のままプールに投げ込まれる。水の中に投げ込まれた小学生はなんとか泳ぎきり、プールの線にたどり着く。逆に言うと、それができなければオランダ国民としての資格がないのである。厳しいがきわめて合理的な災害対策ではないか。

 さて、昼も夜もカーテンを閉じないという理由は……。

 それは、洪水というオランダ国民にとってもっとも危機的な状況を二十四時間窓からチェックするためであるという。

 この本が出版されたのは2007年、3.11以前です。ですから本文では、阪神淡路大震災を多く例に出して書かれています。

 地震国、日本ではどのような災害対策が必要なのだろうか。

 阪神淡路大震災の後、自信を失った建築家は、やがて立ち直り、災害に強いだけではなく以前より大きな建築をつぎつぎとつくるようになった。その上、閉鎖的なまちづくりを提案しはじめた。ぼくは正直言って、そんな建築家たちに落胆している。

 これでは、バブル時代にニョキニョキと高いビルができあがった街と同じではないか、と。まだ、ぼくたちの生活空間や街を建物で埋め尽くそうとするのか。

 しかしながらハードな対策だけでは限りがある。土木技術で固めた要塞のような都市や建物と、広場と銘打った大きな空き地。しかし都市を襲う災害に対して、このような一見スキのないハードな対応はかえって油断をもたらす。ちょっとした設定ミスやシステムのトラブルでパニックが起きかねない。誰もがそのようなハードが完備した場所にいられるとは限らない。

 筆者は最後に大事なことを語っています。それは「生きのびる子供たちのために」という視点からです。

 自然や身体スケールから隔絶された「絶対安心空間」に住む人間が、大地の、地球の、自然のうねりや変動の徴候に気付くことができるだろうか。やはりじぶんの身はじぶんで守るしかないのではないだろうか。壊れたらじぶんで建て直せ。そのような柔らかい対応を考えておくべきではないか。

 これらの文章を読んで、私は防災の基本とすべきことが二つあると感じました。

 「自然との対決」よりも「自然との共生」

 「強固な要塞」よりも「生きのびる知恵」

 私は「国土強靱化計画」より、「国土柔軟化計画」のほうがいいんじゃないか、と思うんですが。