幼稚園の相合い傘

 昨夜のNHKニュース宮城版はとてもよかった!仙台のご老人集会所は「初恋談義」で大盛り上がり!社会福祉がお仕事の女性が企画したんです。聞いてると個人の思い出というよりもう時代の思い出です。なによりもすばらしいのは、初恋の思い出なき人はいなかったことです。「思い出アルバム」第35話目は懐かしき幼稚園の相合い傘のスナップです。

幼稚園の相合い傘

 昨夜のニュースで八十歳くらいの老老男女が初恋談義で盛り上がっているのを見た。つい、顔がほころんだ。みんなの顔がとても生き生きとしていたからだ。「おらだちのころはキッスなんてねかったのさ。好きなのいだんだけっども、二人してあるとき工事現場に行ったのね。そしたら彼女、そごの現場監督にほれでしまってさ・・・そんで結婚して、もう亡くなったらしいな〜」その人の奥さんが笑いで顔をくずしながら言う。「この人、兄貴どいっしょに私の家まで押しかげで来たんだよ〜。見合いなんだっけどもえらい執念でさ〜」旦那さんの方がまた発言。「こいづは、逃がすわけにいがねって思ってさ〜」この方よりも若干お若いある方は、浜辺の散歩で、後にも先にも?はじめてのキッスをしたらしい!


 こんな「シルバーズ初恋ぶっちゃけ集会」を企画した仙台の社会福祉士の女性は名プロデューサーだ。やっぱり初恋話はみんな必ず胸に秘めてる宝モノだし、お互いの宝モノを見せ合いっこするのはとっても愉しい、と私もニコニコ思う。賑やかな画面を見ているうちに、ふと幼稚園の頃を思い出した。


 昭和三十年代はじめ、わが生まれ故郷の小さな町に民間の幼稚園ができた。「山の神神社」という有名な神社が経営する幼稚園で、広い庭園もあり、動物園にあるような大きい檻に7、8頭ものニホンザルも飼っていた。時代は「三丁目の夕日」の頃で、年々賑やかになる町の、ほぼ皆自営のお母さんたちにとって、幼い子どもを預けられる幼稚園はとてもありがたいものだった。思いだしたのは、その幼稚園の便所(その頃はトイレなんていう人はいなかった)の落書きだ。「相合い傘」が描かれていたのだ。傘の下には、幼児ならではのへたくそな字で、同い年の男子と女子の名前が並んで書かれていた。


 私たちは生まれたときから生粋のオスであり、メスであるようだ。相合い傘を見た私は、「う〜〜ん、やっぱり」と合点し、少々嫉妬を覚えたものだった。まだ五、六歳のくせに、もう大人と同じ恋愛感覚を持っている。


 そのハンサムな男の子は小学校二年生で転校し、その後数十年会うことがなかった。女の子は私と同じ小学校、中学校に入ったが、活発で色っぽい娘だった。両人と再会したのは四十二歳の頃だった。男の子は銀行員になっていて、独立して始めたばかりの私の会社の融資担当だった。頭がけっこう薄くなっていたので最初気づかなかったが、名刺を見てお互い「お〜!」と顔がほぐれた。女の子とは、その頃開催した小学校同級生の「年祝い」で再会した。そのときは離婚していたらしく、悪ガキ同級生が囲んでせまっていたのを思い出す。「今、空いてるんだって?」とか言いながら。


 というわけで、何を言いたいのかといえば、こんなこと。幼児の頃から棺桶予備軍の年代になるまで、オス・メスの恋愛本能や選択眼には変わりがないもんだな〜 そういえば私が幼稚園のころ、新任で入った先生にえらくドギマギしたことも思い出すな~。

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