幸せな夢を見るには安眠できる場所が必要です。幸せな仕事を生むには佳き環境が必要ではないでしょうか?こんな仕事環境があったらいいな〜と夢想してみました。
夢の仕事場
数年前のある日、田舎の図書館にあった古ぼけた日誌風の本を読んだ。
タイトルには「ノボ村長の開拓日誌」とあった。
とりたてて読みたい本もなかったので、閲覧コーナーのベンチに腰掛け気楽にページをめくっていった。
その頃私は仕事に疲れ、家庭にも居場所を見つけられなくなっていた。
その本は、素人が書いた稚拙な日記なのだが、あるページにとても惹きつけられた。
何かワクワクするものを感じさせられたのだ。
「私にもできるかもしれない!」と。
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そのページにはこんなことが書いてあった。
私は「仕事」と「生活」が重なり合っていることがとても大事だと思うのです。
今では「仕事」は「仕事」、「生活」は「生活」と分離し、それを当たり前と思う人だらけになってしまいました。
ですから「仕事」がとても貧しくなってしまったと思うのです。
本来人の仕事とは「幸福」を生み育てるためにあると思うのです。
「幸福」といっても、そんな大それたことではないのですが。
たとえば、安心安全でおいしい野菜をつくること、それを味わうこと、それを食べてもらうこと。
これなんか最高級の「幸福創造仕事」といえるのではないでしょうか。
ところが世の中は「成長、成長!」と止まらぬ太鼓に踊らされ、「効率教の信者にあらずんば人でなし」みたいになってきました。
多くの人々は巨大な効率工場の箱の中に毎日出勤し、「生活のためさ。。。」と自分に言い聞かせています。
いやな仕事を早く済ますにはどうするか、それが能率と思って「仕事もどき」をしています。
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仕事を少しでも豊かにしてみたい!
私にできる小さな試みを実験することを考えつきました。
とても小さな「みんなの独創村」を創ろうと。
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かねて私の変人ぶりをよく理解している幼なじみと会いました。
彼の実家はとても土地持ちで、眺めの良い場所に荒れ放題ながら広い土地を持っていました。
そこを格安の金額で貸してくれるというのです。
町から2キロぐらいの場所ですから、そんなに辺鄙な場所ではありません。
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どうしようかと、あれこれ悩みつつ、ある日ログハウスの展示場に入りました。
そこで出会った衝撃のログハウス!
現代風なアレンジで、なおかつ玄関を入ると昔の農家のような土間があり、そこには薪ストーブもあるのです。
広く開放的で自然味いっぱいの山小屋風住居。
とても触発されました。
「これを小さな会社経営者やデザイナーたちでシェアしよう、『みんなの独創村』のベースキャンプにしよう!」
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田んぼ三枚分もある広大な土地にそのログハウスは建設されました。
建設資金を捻出し、さらに創造的な仕事を生み続けるために「みんなの独創村LLP」を設立し、運営主体にしました。
それぞれが、今の会社、仕事を継続しながら連携していけるのでした。
毎月のコストも分担ですから、マイホーム一軒分を数社で負担する勘定です。
参加した人がみな大幅コストダウンにつながるとは、正反対にも思える話です。
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やがて構想はふくらみ、次々と新しい施設ができ、新しい企画も生まれていきました。
ベースキャンプのログハウスは共同オフィスであり、語らいの場、研修の場、あるときは山小屋ホテルにもなります。
敷地内につくった「自然農園」ではみんなで野菜を育て、仕事の息抜きにもしています。
みんなで収穫し、みんなで調理し、みんなで食べる昼食はまるでイタリアの田舎みたいです。
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スモールハウスも二棟立ちました。
一人で仕事をしている方が使うんですが、事務所やアパートにかかる費用がここなら一カ所ですみ、大幅に節約できます。
さらに本体のベースキャンプログハウスも共用できるんです。
しかも超好環境と、気の合う仲間との緩やかな連携もあって良質な仕事が倍増。
最近では、皆で雨水タンクや自然エネルギーを利用した野外露天風呂などもつくって楽しんでいます。
興味ある人たちがとてもたくさん訪れるようになったので、格安既製品のミニログハウスなども数棟立ちました。
そのうち週末喫茶店やビニールハウス栽培などもする予定です。
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いままでシステム営業をしていたメンバーの一人は、ユーザーや検討客を訪問するのではなく、ここに来てもらうスタイルに変えました。
気持ちのいい自然環境の中で、ざっくばらんな会話や実際のワークショップを経験してもらうと、商売はもう金銭関係だけではなくなるのでした。
さらに、ここにはデザイナーはじめ、善き仕事をめざす創造的な人たちが集っているので、そのお付き合いの中で、みんな夢がひろがるのを実感するのでした。
「会社人」「社会人」としての私たちから、「人間」としての私たちに、双方意識が変わり、仕事をすればするほど互いの幸福感が増していくのです。
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それから数年。。。
「私の土地も余っているのですが、このようにしたいのです」という人も現れるようになりました。
いつしか「みんなの独創村」パート2,パート3が増えていったのでした。
私は何か元気をもらった気がしてきた。
世の中、こんなことだって工夫できるんだ。
そして、いつか自分もやってみようと思い立った。
そう思えた理由は、私にも「気の合う仲間たち」がいるからだった。
それこそが財産なんだと気がついたのだった。