オリンピックとはいったい何の祭典でしょうか。スポーツ?民族?国家?経済?
「汝、人を殺(あや)めるべからず」を掲げる宗教にさえ、いつのまにか好戦的な会派ができてしまいました。
歴史の長い道程の中で、出発時の精神や内容と真逆になってしまうことは実によくあることです。
はたして世界最大の祭典「オリンピック」はいかに?
(1936年IOCにて1940年(昭和15年)皇紀2600年に東京オリンピック開催が決定した。しかし戦争のため幻となった)
ノボ辞典より
Olympic Games【五輪】名
オリンピックは三つある
古代オリンピック、近代オリンピック、そして現代オリンピックだ
古代オリンピックは「神々の祭典」であった
近代オリンピックは「国家の祭典」であった
現代オリンピックは「経済の祭典」である
しかし、三つとも建前は「スポーツの祭典」である
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ギリシヤで発祥した古代オリンピア大祭は、神々の祭典の名のもと、休戦のために行われた
やがて19世紀、クーベルタン男爵が音頭を取り、国家の覇を競う近代オリンピックとして蘇った
国家の祭典はベルリンオリンピック「民族の祭典」で最高潮に達した
やがてロサンゼルス大会以降「経済の祭典」に変容し、今に続いている
なぜかくも長く続き得ているのか
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スポーツは天が人類に与えた最高の快楽である
その魅力は戦(いくさ)を中断させることができるほど強烈なものである
スポーツの快楽を表すのに「クライマーズハイ」「ランナーズハイ」などという言葉がある
といっても、その域に到達するのは実に困難なことである
凡人には想像できぬほどの訓練と忍耐を重ね、肉体を限界すれすれまで痛めつけ、それでも快楽の獲得にはまだ足りぬ
あまりの苦しさにすべての自意識が消え去り、気絶寸前、忘我の状態に至ったときにその快楽はようやく訪れる(らしい)
その快楽感は、宗教における法悦や交尾の絶頂段階と近いものである(らしい)
スポーツとはなんと原始的で崇高でエロティックで、人間性そのものであることか!
競技者も観覧者もこれほど酔いしれるものは、地上には他にない
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現代オリンピックは「経済」が深く関わるようになった
スポーツの快楽は競技者の「ランナーズハイ」から主催者の「マネーズハイ」に変わってしまった
オリンピックは今や「土建業の祭典」であり「商売の祭典」であり「巨大都市の祭典」である
だから、まだまだインフラが未熟な新興国にはうってつけかもしれない
成熟した国では、祭りの後によけいな箱物がまたふえるだけだ
日本のようなすでに盛りを過ぎた国においては、オリンピックの開催に懐疑的な国民も多い
すでに一極集中が限界を超えた爛熟した大都市だけの巨大な祭り
祭りを理由に、あぶく銭をいっときジャンジャカか廻そうという発想が情けないと彼らは思っている
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さて、オリンピックの中身である「スポーツ」には近年大きな変化がある
ビジネスや政治をスポーツと同一視する者たちが増えているのだ
身体を使うことだけがスポーツではないと彼らは考える
どれだけ高く跳べたかではなく、どれだけ儲けたかが彼らのスポーツとなる
どれだけ良い試合ができたかではなく、どれだけ勝てたかが彼らのスポーツとなる
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彼らは知的能力の競争も一種のスポーツであると拡大解釈する
それはバーチャルな幻影を自分の肉体と錯覚することにつながっている
彼らはガンダムや無人攻撃機や巨大システムにあこがれていく
それを自分の肉体の延長のように妄想していく
かくして未来のオリンピックは「競争」から「戦い」へと変わっていくかもしれない
「肉体」から「知能」(だけ)の戦いへと変わっていくかもしれない
自らの肉体が痛むことなどないのだから、競技は過熱し過激化していくことだろう
ローマ時代のコロッセウムのように、欲求不満の観客は総立ちで、巨大な競技場の禍々しき金属の人形に「殺せ!殺せ!」と声援をおくることだろう
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実に当たり前の話だが、スポーツは肉体だけの競技であるべきだ
さらに当たり前の話だが、オリンピックは政治や経済のためにあるべきものではないはずだ
けばけばしく肥大化したオリンピックは、遠いいつの日かマラソンの転回点のように原点に回帰する日が来ることだろう
望むべくもないのだが、2020年の東京オリンピックでは、その転回点がぼんやりとでも見えないだろうか、と考えてしまう。
しかし転回点の先にある(あったはずの)その原点とはいったいどんなものであろう。
残念ながら当辞典では今それを表すことができない。。。
『ノボ辞典』目次
ノボ辞典「オリンピック」
ノボ辞典「デジタル」
ノボ辞典「丁寧」
ノボ辞典「農」「農業」
ノボ辞典「経済」
ノボ辞典「憲法九条」
ノボ辞典「選挙」
ノボ辞典「反面教師」
ノボ辞典「必要悪」
ノボ辞典「愛国心」「愛国主義」
ノボ辞典「能力」「性能」