幼老ファクトリー

 こんなに物があふれる時代なのに、年々年寄りに合う物が少なくなっていくのはどうしてなんでしょう?
 年寄り向けの商品については毎日のように感じていました。「日々疎外されていく。。。」
 
 私自身、当事者になりましたから。

 で、わかったのは「年寄りに合う物が少なくなっていく」のではなくて「年々合わせにくくなっていく」でした。

 最初から合わないのではなく、今まで何ともせずにできていたことが年々できにくくなっていくのです。

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 まずは「お目々」

 老眼に合わせて眼鏡も遠近両用、小さい画面、小さいアイコン、小さい字は「いじめ」に等しくなってきます。

 次は「手指」
 年取ると手指にこわばりがでてきて、スムーズな動作が(若い頃に比べて)しにくくなってきます。

 影響が大きく出るのはマウス操作です。小さい的に当てるのが針に糸を通すようです。

 スマホやタブレットでも影響はあります。

 あらぬところを触ってしまい、敏感すぎるタッチ画面がすぐ反応してしまいます。

 最後は「脳みそ」

 機能がいっぱいありすぎて本当に必要なものを見つけるのが、ゴミ箱から針を探す心境です。

 作業中探す時間が半分です。

 機種やOSが変わると昨日までの絵地図は消え失せ、もうどこに何があるかわかりません!

 それとパスワードの洪水。

 こんなこと我慢するなら一抜けた〜と言いたいところを我慢して。。。

 最大の悩みは「本読む暇がな〜い」

 (「朝起きて一服、トイレで一服、飯食って一服、年がら年中一服かわりにスマホを取り出す大人たち」)

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 もしかして、個人用電子道具の使いにくさは子供も同じじゃないか?

 「お目々」のハンデはないだろうが、「手指」や「脳みそ」のハンデは子供も年寄りと一緒では?

 と思ったのはこんな会話からでした。

 夕食時、女房に話しかけました。

 「孫たちさっぱり来なくなったな〜、何してっかな〜?」

 「そんなため息つかないで電話してみたらいいっちゃ」

 「(娘の携帯に)電話したって、俺がかけた電話になんか出たためしないべや」
 と、ここまで会話して「子供と電話」についてハッと気づきました。

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 子供にも電話があればいいのに。

 いやもしかすると、小学生になると持たせている親も多いんじゃないか?

 でも、大人向けのケイタイなんかはいろんな意味で持たせられないな〜。

 と思って、子供向け携帯を調べたら「docomoキッズケイタイ」なるものがあるじゃないですか。

 商品サイトにはこんな特長が書かれていました。

 ワンタッチはっしんキーで、あらかじめ登録した連絡先4件に簡単に電話ができます。また、4件以外へは、最大10件登録できる電話帳から簡単に発信できます。電話帳に登録していない相手への発信はできません。

 定型文を選ぶだけで簡単にメッセージが送れます。また自由入力でお子さまの言葉でメッセージを作成し、送信することもできます。

 ブラウザ非搭載のため、有害サイトなどへのアクセスも心配無用。

 お子さまが、防犯ブザー用ストラップをひっぱると、大音量)のブザーで周囲の人に危険をお知らせして、サイドライトが点滅し、あらかじめ設定した保護者の方の緊急連絡先へ自動で発信します。同時に、保護者の方にお子さまの現在地情報も通知します。

 いまどこにいるの?と思ったら、イマドコサーチ契約者のiモードケータイ・スマートフォンやパソコンから、「いますぐ検索」を使って地図でお子さまの居場所を確認できます。

 防水、防塵に対応。

  →docomoキッズケイタイ

 これだったら、子供に持たせてもいいかな、と思いました。

 ところが特長を読んでいるうちに「いや、これって年寄り用にもぴったりじゃないか?」と思えてきたのです。

 少なくても(全然楽でない)「ラクラクホン」よりよっぽどいい!

 子供向けとばっかり言わないで、老人と子供どっちのこともいっしょに考え工夫した商品があればいいな〜と思いました。

 メーカーだってコストダウンと新市場の両方が図れるんじゃないのかな〜

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 もし、そんな商品を開発する「幼老ファクトリー」ができたとしたら、

 まずは、電話機、その次パソコン(タブレットも)ですね。

 パソコンは幼児用キーボードを考えれば年寄りにも応用できると思うんです。

 タッチパネルも二回押しじゃないと反応しないとか。

 マウスは使わない操作が可能とか。

 余計なものは最初から付いていないというコンセプトで。

 使える時間帯とか使用可能時間も設定できて、使い過ぎを防止してくれること。

 機能面で言えば、「大昔のパソコン」に戻すというコンセプトですね。

 それで十分だったんですから。

 実は今だってそのはずなんです。

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 なんでこんなに振り回されっぱなしなんだろうな〜。

 IT関連の仕事をしているこの私でさえも。。。

 いったいだれがこんなふうにしてるのかな〜?

 近未来、もっとも贅沢な人というのは、パソコンやらネットやらと無関係に生きられる人とされるかもしれません。
 
 だって「繋がれていない」んですから。

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 茨木のり子さん、私もよ〜くわかるようになりました。。。


 茨木のり子詩集
 「倚りかからず」より

 「時代おくれ」

 車がない
 ワープロがない
 ビデオデッキがない
 ファックスがない
 パソコン インターネット 見たこともない
 けれど格別支障もない

   そんなに情報集めてどうするの
   そんなに急いで何をするの
   頭はからっぽのまま

 すぐに古びるがらくたは
 我が山門に入るを許さず
   (山門だって 木戸しかないのに)
 はたから見れば嘲笑の時代おくれ
 けれど進んで選びとった時代おくれ
       もっともっと遅れたい

 電話ひとつだって
 おそるべき文明の利器で
 ありがたがっているうちに
 盗聴も自由とか
 便利なものはたいてい不快な副作用をともなう
 川のまんなかに小舟を浮かべ
 江戸時代のように密談しなければならない日がくるのかも

 旧式の黒いダイアルを
 ゆっくり廻していると
 相手は出ない
 むなしく呼び出し音の鳴るあいだ
 ふっと
 行ったこともない
 シッキムやブータンの子らの
 襟足の匂いが風に乗って漂ってくる
 どてらのような民族衣装
 陽なたくさい枯草の匂い

 何が起ころうと生き残れるのはあなたたち
 まっとうとも思わずに
 まっとうに生きているひとびとよ