東の「あにめ」と西の「アニメ」

 連休はジブリの「かぐや姫の物語」とディズニー&ピクサーの「プレーンズ」を観てきました。どちらも楽しめました。
 アニメ映画の世界では、わが日本の「ジブリ」とアメリカの「ディズニー&ピクサー」が東西正横綱といったところでしょうか。

 それぞれ違った個性なのは、観客にとって嬉しいことです。

 はじめに観たのは「かぐや姫の物語」です。

 このアニメは「竹取物語」を忠実になぞっており、ストーリーは実に地味といえるでしょう。

 ところが!

 その絵の冒険的なこと!

 筆絵、水彩画、絵巻風、日本伝統匠の技ともいえる大胆な描画技法にびっくりしました。

 作中、かぐや姫が野山を疾走するシーンがあります。

 単純な構成のとても少ないコマながら、筆のタッチをダイナミックに変化させ、驚くほどのスピード感を表現しています。

 さらに、水彩画で表される日本の風景はとても郷愁をさそうものでした。

 覚えのあるストーリーを斬新な映像を見ながら反芻し、脳裏に想い浮かべることはこんなことです。

 自然に育まれ自然の中で素朴に暮らしていた時代。

 やがて人間の欲望や傲慢とともに都市化が進んでいく。

 その中で私たちは確実に何かを失っていく。人工と享楽の中で。

 しかし自然は傷みながらも、かぐや姫の時代も今に至るも存在し続けている。

 それがこの地上に生きる私たち、いや生き物にとっての救いなのだろう。

 「時代」は人の一生とも言い換えられることだろう。

 「かぐや姫の物語」は正攻法のストーリーで奇をてらったところはない映画でしたが、それだけに、まるで遠赤外線のようなじわ〜〜っとした温かみと深さを感じさせられる「佳品」でした。

 ちなみにエンドロールの最後まで席を立つ人はいませんでした。

・・・・・・・・

 次に(別な日に)観たのはディズニー&ピクサーの「プレーンズ」です。

 これもおもしろかった!

 「カーズ」もそうでしたが、ディズニー&ピクサーは無生物の擬人化がほんとにうまいですね〜。

 表情もさることながら、飛行機各部がまるで人体の各パーツのようになめらかな動きをします。

 飛行機にはマッチョや気取りやもいれば、きれいな女性プレーンズもいます。

 そのうちの一人(一機)は日本代表「さくら」でしたから嬉しい感じがしました。

 この映画は、全編にあふれるスピード感と鳥瞰体験がすばらしいですね。

 まるでヒバリが高い空へまっすぐ突き抜けるような、そんな爽快感があります。

 途中出てくる空母や、そこからの特殊な離陸なんかも興味を覚えました。

 ま〜、さすがに館内は子供たちとヤンママだらけでした。

 還暦オヤジがなんで?って感じです。

 それで、切符を買うときも館内でも少し恥ずかしい感じでしたが、ずっと楽しく観ることができました。

 「おまけ」ももらったので、後で孫にあげようっと!


・・・・・・・・

 偶然、東の「あにめ」と西の「アニメ」を比べて観ることになったわけですが、いろいろ気づかされます。

 最近のジブリの作品は「文芸作品」といえるようで、心の琴線を柔らかく刺激します。

 対して、ディズニー&ピクサーの作品は洗練された「娯楽作品」一直線という感じです。

 なにか、ウエットな日本文化と陽気なヤンキー文化の対比も感じられそうです。

・・・・・・・・

 というわけで、最近のCG丸出し映画に辟易してきた私には、とてもありがたい東西アニメの頑張りでした。

 そうそう思い出したんですが、もうひとりヨーロッパにもアニメの横綱がいますね。

 フランスはシルヴァン・ショメ監督の作品です。

 「ベルヴィル・ランデブー」なんか10年前映画館で観て、あんまりいいのでDVDも買ってしまいましたよ。

 「イリュージョニスト」も切ない名作でした。

 すべてセリフなしが特徴ですね。

 こちらも新作来ればいいな〜。

 というわけで、アニメのおかげで映画をまだまだ楽しむ自信がついた私でした。