風があっての蚊取り線香

 蚊取り線香、縁側、うちわ、浴衣、蚊帳。これらの組み合わせが単なる風物詩ではないことを知りました。
 蚊取り線香の香りは、今や幼き日の郷愁を誘うものに変わってしまいました。

 というのは、現代では「電子蚊取り」が主役になってしまったからです。

 火も使わず、煙も立たず、匂いさえ(ほとんど)ない「電子蚊取り」は、「蚊取り線香」と同じものと私は思っていました。

 ところが、使用環境がそれぞれ異なる別物らしいんです。

 『啄木鳥通信』というログハウスメーカの季刊誌で知りました。


 蚊取り線香は、窓を開け放ち、風の流れの中で使う道具です。

 冷房設備が完備した昨今では、使われることが少なくなり、シートやリキッドなどの蚊取り器が主流に。

 でも、時には窓を開けて、風の通り道に蚊取り線香を置き、夏らしく過ごしてみてはいかがでしょう。

 そういえば、「蚊取り線香」を密閉した部屋で使うことはなかったな〜、と思い出しました。

 反対に「電子蚊取り」は窓や戸を閉めて使っています。

 「似て非なるもの」といったところでしょうか。

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 さて、この「蚊取り線香」はいつ頃発明されたのでしょう。

 浴衣姿にうちわ・・・

 この風情といえばお江戸かな。

 きっと江戸時代にもあったんじゃなかろうか?

 と思って、金鳥のホームページで調べてみると、現在の渦巻き型が発明されたのは1895年(明治28年)だそうです。

 今から120年前なんですね。

 創業者の奥様が考案したようです。

 しかし、渦巻き型に至るまでには数々の試行錯誤があったようで。。。

 現在の「金鳥」の創業者が粉末状にした除虫菊におがくずをまぜて燃やす方法を考えたのが始まりです。

 しかし、夏に火鉢が必要だったこともあり、広くは普及しませんでした。

 次に線香に除虫菊を練り込むことを考案。

 当初は棒状で一本は40分ほどで燃え尽きてしまい、しかも線香が倒れて火事が起こることもあったのだといいます。

 偉大な発明は一朝一夕には成らずですね。

 渦巻き型がロングヒットとなったのにはさらに秘密がありました。

 解きほぐすと全長が75センチにもなり一度の点火で7時間使用できます。

 これは人の睡眠時間に合わせた長さだといわれています。

 一度点けて眠れば、朝までぐっすり眠れるというわけ。

 
 江戸時代は、お日さまが沈んだ夜に時間を計測するため「しきみ」線香を使った「香時計」を使っていたそうです。

   →時間が伸び縮みした社会

 さらに遊郭では、線香を立てて一ラウンド?を計測していたそうです。

 このような伝統あってのアイデアなのかもしれませんね。

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 もうひとつおどろくべきことがありました。

 「蚊取り線香」の効能はあの「煙」にあると思っていましたが、実は。。。

 す〜〜っと一筋立ち上る煙そのものには、実は蚊を殺す力はありません。

 実際には線香が燃焼する少し手前、250度ほどになった時、気化して放出される成分に殺虫効果があり、煙はその拡散を助ける運び役です。

 なるほど「煙」と「殺虫成分」との合わせ技で一本か!

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 あらためて「蚊取り線香」を考えてみると、なかなか魅力的です。

 開け放して風とともに利用するという自然一体開放型。

 目に見える煙で効いている方向を確認できる。

 蚊取り線香の長さで過ぎた時間を(アナログ的)に実感できる。
 
 もしかしたら悪役の「蚊」たちも、どうせコロリとさせるなら「蚊取り線香」使ってくれよ、と言うかもしれませんね。

 金鳥さんんにはぜひこれからも「蚊取り線香」の生産を続けていただきたいものです。

 私も近いうちに渦巻き「蚊取り線香」買ってこよう!

  →笑うキンチョール