ヒトラーの末裔たち

 戦後70年、世界にネオナチはますます増えてきそうな予感がします。日本もなんとなく。。。
 いくさの語り部は年々少なくなり、「戦争の悲惨」は人々の記憶から消え去り、「国家の誇り」がズームアップしてきました。

 さらに経済格差の増大とともに「リセット」と「カリスマ」を求める人々が増えてきました。

ノボ・アーカイブス

ヒトラーの末裔たち

 はるか昔から、私たち大衆は歴史の限られたヒトコマだけしか知らされていない。

 実は、第二次世界大戦にはこんな秘史もあったのだ・・・

時の征服者

 ヒトラーにはある秘密があった。

 それゆえに彼は自決するとき微笑んでいた。

 エヴァも知らないことだった。。。

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 あの悲惨な戦争が終わってから長い年月が過ぎたのに、世界中の誰も知ることはなかった。

 彼には子どもがたくさんいたのだ!

 世界中に、さまざまな色の。

 ヒトラーが自分の血を永遠に残し、未来に帝国を再興しようと決意したのは、戦争末期あのベルリンの防空壕に閉じ込められたも同然の頃だった。

 「世界征服」を彼の子孫に託すことを助言したのは、ナチスの幹部であり医師でもあったヨゼフ・メンゲレであった。

 ヒトラーの精子は冷凍され、ひそかにUボートに積まれ、日本へ、アルゼンチンへと運ばれた。

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 その後、世界中に彼の子孫を密かに誕生させる産婆となったのは、メンゲレをはじめとする、戦後世界に逃亡したナチスの選りすぐりの残党たちであった。

 それは、古代・中世のキリスト教の異端が、弾圧を逃れその血脈を保とうとした、あの暗く密かで不気味な方法にどこか似ていた。
 
 「時の征服」を担う彼の子どもたちは、誰ひとり自分の父親を知らない。

 それは日本においても同じであった。

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  「もしかして本当では?」と私が思い始めたのは2025年の秋だった。

 その時代、東京オリンピックの特需も終わり、日本はすでにあらゆる産業が疲弊し世界の三流国となっていた。

 そんな元気のない日本でも空元気に包まれるときがある。

 今も昔もかわらぬ、あの騒々しい「選挙」のときだ。

 胸に白いたすきをかけ、てるてる坊主のようなマイクを握り締めて選挙カーから絶叫する。

 まるで鮭が産卵するときのような、いのちを振り絞るような声で叫ぶ。

 「私にぜひ任せてください!」と。

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 不況にあえぐこの日本では、今まで以上に、教祖のような「強きカリスマ」を求めていた。

 もともとお上意識が強いこの国では、「自分たちのために」「自分たちが」「自分の頭で」良き未来を考え、政治に参加するという意識はついに育たなかった。

 政治とは「自分に得な何かをしてもらう」「難しいことを考えてもらう」という他人任せの意識しかなかった。

 そのくせあれこれ「あらさがし」はどの国民よりも得意であった。

 それともうふたつ、「今にしか興味がない」「過去はすぐに忘れる」という性質が顕著であった。

 そのいい例が原発だ。

 十数年前の大震災後、フクシマは今も汚染が続いているが、誰ももう、その話はしない。

 休止していた原発はすべて再稼動している。

 大震災のときに皆が流した同情の涙も、とっくの昔に乾いている。

 世界中が内心あきれているが、日本人は「しょうがないさ」と軽蔑を受け入れてしまっている。

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 そんな閉塞した時代のこの選挙で、大いに人気を博している候補者がいた。

 独特のミリタリールックに身を包んだかっこいい彼が、髪を振り乱して絶叫している内容はこんなことだ。

 「競争に負けたままでいいのか!恥ずかしくないのか、わが旧き伝統の民族よ!」

 「すべてのリソースを競争につぎこめ!世界に強さを示せ!なめられるな!戦え!そのような人間に育てる教育に変革しなければいけない!」

 「強き者を育て、強き国となり、強き人々、強き国々との偉大な連携を今こそ進めていくのだ!」
 
 男性も女性も、老いも若きも、拍手喝さい、候補者の名前を連呼する地響きのような大合唱だ!

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 私は思った。

 「彼の唱える教育改革とは、小学校は中学校の、中学校は高校の、高校は大学の、大学は企業の、企業は国の、すべて予備校にせよということか?」

 そして不安は募った。「もしかして、国は彼の、と続くのか?」と考えて。

 多くの日本人にはとてもうれしいことであろう。

 もう悩まなくていいのだ。

 すべては彼が考えてくれるのだ。

 彼の力にすがっていさえすれば、大いに引き上げてくれるのだ。(そのはずだ・・と)

 多少危険できな臭いことが起ころうと、そんなこといいじゃないか!今がよくなれば。

 戦うのはどうせ軍隊だ。(その頃は日本国軍が出来ていた)

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 やがて、有名デザイナーのかっこいい制服に身を包んだ「日本親衛隊」が全国へ野火のように拡がっていった。

 「羊の国から獅子の国へ脱皮しよう!」「『大和維新』を実現しよう!」と、雄たけびをあげながら。

 若者はそれしか考えつかない。

 自分がヒーローになったような高揚感がとてもたまらない。

 そこにしか鬱屈した魂のはけ口は見出せないのだ。

 この世界に、ヒトラーの血脈が途絶えることは決してないであろう・・・浜の真砂が尽きるとも。

 私たちの欲望が彼らの「乳母」なのだから。