暑い夏、お笑いSF書いて冷や汗かこうかな〜、なんて思い立ちました。
きっかけは、先日友人とある企画の打ち合わせをしたときの雑談でした。
その友人はそのまた友人と共同事務所をつくって数日前に引っ越したばかりです。
「友人」のほうはけっこうきれい好きで、まめに炊事・洗濯・掃除をこなすタイプですが、
「そのまた友人」のほうはデザイナーなんですが、散らかっていないと集中できない野性的な?性分らしい。
そんなわけで「儲かったらイの一番にルンバ買わなくっちゃ」という冗談みたいな話で盛り上がりました。
私は友人に尋ねました。
「いくらルンバでも部屋が汚すぎるとヤケ起こすんじゃないか?」
最新商品に詳しい友人が言うには、
最新式のルンバは「子ルンバ」みたいなものが二つ付いていて、子ルンバの間は赤外線かなんかで境界線みたいになるらしい。
その境界線より先は掃除しなくていいよという指示ができるそうなんです。
あまりにも汚いエリアはこれでブロック?
なにやら妄想が生じてきました。。。
ノボ村長の妄想物語
未来社会ルンバ
時空自転車で50年後の日本に行ってみた。
そこで思いがけず「アラジンと魔法のランプ」みたいな体験をすることになった。
・・・・・・・・
そのころ未来社会ではロボットが大活躍していた。
と言えば、わが時代の方々はきっと人型アンドロイドが全盛なのだと思うことだろう。
実は未来のこの時代、近隣諸国との武力衝突やら長引く不況やらが影響し、所得水準は50年前の半分まで下がっていた。
高額なアンドロイドなどだれも買えない時代になっていたのだ。
金銭的な理由だけでなく、高級アンドロイドは国防関係専用ロボットとして独裁政権の独占御用達であったせいもある。
(国防アンドロイドには「北極1号」とか用途が不明な機種もあるようだ。。。)
ところが国民の体力の劣化もこれまた著しく、ある程度機械の力を借りないと肉体労働に支障をきたす社会になっていた。
そこで人気爆発したのが50年前に開発されたお掃除ロボット「ルンバ」だった。
これはボディがただの円盤で、やれる作業も実に単純なので価格は二束三文。
その昔、日本で使われたホウキのような値段でだれもが買えるのだった。
・・・・・・・・
どこの家に行っても数台のルンバが働きっぱなしだ。
まるでトトロの「マックロクロスケ」みたいな動きで「ウイ〜〜〜〜」と部屋中を暇なし掃除している。
人間様のほうはといえば、仕事がない人も多く、膨れた腹を粗悪なファーストフードでますます膨らませ、
まるで巨大な置物のようになってホログラムテレビジョンを見ている。
なんとも不健康な社会に見える。
それとは対照的に、この時代のルンバはとても働き者。
床だけじゃなく、床に置かれた置物まで掃除してくれる優れものだ。
置物と間違われて掃除されちゃ大変と、みんな自分の周りに子ルンバを置いて進入禁止にしている。
・・・・・・・・
家の外はどうなんだろうと広い通りに出てみた。
自動車がけっこう少ないのは、買う金がないのと、レジャーなどする経済的余裕もないからだろう。
代わりにルンバの大親分みたいなのが何台か大通りを走っていた。
異様な光景なのでとても興味深く見ていたら、急に一台が「プオ〜〜プオ〜〜」と警笛を鳴らして私に近づいてきた。
・・・・・・・・
私は立ちすくんだまま動けなかった。
ルンバの大親分は私の目の前で急停車した。
そして、そのルンバから巨大な回転ブラシが出てきた。
なんと、私は回転ブラシに絡め取られルンバの中へと取り込まれてしまった。
私は無我夢中で抵抗しながら叫んだ。
「俺はゴミと違うぞ!」
・・・・・・・・
やがてルンバの中に取り入れられた私はびっくり仰天した。
ルンバの中で「人間」がゴミの分別作業をしていたのだ!
なんとこの未来社会ではルンバが主人で、(ある種の)人間は「ゴミ」または「ルンバの部品」でしかなかったのだ。
巨大ルンバは独裁的政権と連動した警察システムになっていた。
巨大ルンバは「社会のゴミ?」を取り除くロボットとして大活躍していたのだった。
私は「アラジンと魔法のランプ」を思い出した。
そしてゴミ分別強制労働をさせられながら、へたな洒落をこいてわが身をあざ笑った。
「この社会は、『アラジンと魔法のルンバ』だよ。。。」
しばらくしたら涙が出てきた。
「人間がルンバに使われる社会なんて絶対いやだ!!!」
今となっては遠き佳き日と思える50年前の日本に帰れる日は来るのだろうか。。。
まさに冷や汗もんのショートショートでした。。。あ〜〜涼しい(寒い?)