焼き鳥のけむり

 気象予報士は得意げに?今日から寒さが厳しくなると語っていました。ということは、いよいよ縄のれん、焼き鳥、おでん、熱燗の季節ですな〜。
 古い奴ほど温かいもんをほしがるもんでございます。。。

 しみじみ呑めば〜しみじみと〜〜をを〜
 思い出だけが〜行き過ぎる〜♪

 ある遠い冬の日のスナップショットです。


(高倉健、倍賞千恵子「駅 STATION」)

ノボ・アーカイブス

『詩集ノボノボ』より

焼き鳥のけむり

 たまにしか行かない近所の居酒屋で
 焼き鳥を焼いてもらった
 帰ってきたら
 体が焼き鳥のけむりくさい
 たった二串だけなのに

 十数年前を思い出した
 あれは駅前の小さな居酒屋
 私より一つ上のおばさんがやっていた
 たまに一人娘が手伝いに来ていたな

 ある常連さんがいて
 陽気にママに語りかけていた
 歯が抜けたしょぼしょぼ口調で
 その日は特にうれしそうだった

 しばらくして
 ガラガラと 扉を開ける音
 元気よく振り返る彼

 「待った〜」
 明るい声で 
 短髪の小柄な女性が現れた
 私より五、六歳下かな?
 優しそうな微笑みが感じよい

 そのとき扉から ふわ〜と
 彼女と一緒に入り込んだきた匂い
 それが今日 しみついた匂いだった

 女やもめの彼女が働いていたのは
 近くの焼き鳥屋
 髪や体についた匂いを洗い流すひまもなく
 足早に駆けつけたのだ
 ずっと年上の彼との逢瀬に

 彼の顔は優しかったし嬉しそうだった
 まるで遠くに就職した娘と
 久しぶりに会うように

 けむりの匂いで
 そんな一場面をふと思い出した
 ほんわかとして 少し切ないような

 あの日私は 早めに店を出たっけな〜

 →ノボ村長の「詩集ノボノボ」