ドイツ流免疫の話

 私が日本酒を買っているお店で旦那さんが赤ちゃんをカンガルー抱きしていました。そこでついつい蘊蓄話と相成りました。
 旦那さんは43歳、抱いていたのは再婚した奥さんとの間にできた初の赤ちゃんです。

 今ではこんなイクメンパパも珍しくなくなり、非イクメンパパであった私なんかは、何となく肩身が狭い思いがします。

 古い奴ほど説教ってものが生きがいになってくるようで、赤ちゃんのためにと蘊蓄話を始めました。

 そこに奥さんもやって来て、しばし店先授業と相成りました。


ドイツ流免疫の話

 「赤ちゃん可愛いね〜。(女の子だよね?)

 そう、生後七ヶ月になるんだ〜。

 それじゃお母さんの免疫も切れる頃だから、そろそろ熱出したりが多くなるかもね」
 「そうみたいですね〜」と奥さん

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 「あっ、そうそう、解熱剤は熱がいったん上がってから処方しないとだめだよ。

 熱が上がって免疫のスイッチが入るんだからね。

 熱が出る前に解熱剤与えると、いつまでも免疫が働かずかえって病気が長引くよ。

 熱が出るのが悪いんじゃなくて、高熱が続くのが悪いんだからね」

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 「もうひとついい話を教えてあげるよ。

 数年前NHKの特集番組で見たんだけど、ドイツでは赤ちゃんをわざわざ「牛舎」に連れて行くらしいよ。

 ベルリン大学で長期にわたって調査・研究して、免疫によい効果が実証されたらしい。

 うろ覚えだけど、こんな内容だったな〜」
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 「人の免疫は二種類ある。

 ひとつは「細菌」などに対する免疫。

 もう一つは蚊に刺されたり、植物にかぶれたりする「皮膚」に対する免疫。

 幼児の頃に正常な免疫システムができると、きちんと二種類に分かれるらしい。

 ところが幼児の頃にあまりにきれいな環境で育つと、この免疫システムがきちんと分化しないらしい。
 
 その結果、本来「細菌」に向かう免疫まで「皮膚刺激」に向かい過剰防衛するらしい。

 たとえれば、警察と軍隊に分かれるべきところがうまくいかなくて、ちょっとした喧嘩に軍隊が出てくるようなもんだね。

 それが「アレルギー体質」というものらしいよ」

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 「その免疫分化の分岐点は生後一年未満にあるらしい。

 ところが一歳までの間に、牛舎とかに何度か連れて行くだけで、この免疫システムが正常に作られるというんだ。

 牛舎の糞に生息し、畜舎の空気に含まれている様々な細菌に触れることで、ある物質が体内で合成されるらしい。

 それが免疫を正常に育て、アレルギー体質になるのを防いでくれるらしいんだね。

 昔の子供に花粉症とかいなかったのは、世の中全体が今より不潔?だったおかげだね。

 ということで、近くに牛舎あったら何回かだっこして牛さんを見せるといいよ。

 詳しくはネットで調べてね」
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 旦那さんも奥さんもへ〜〜!という顔をして、それから二人でこう語り合いました。

 「親戚の(なんとか)おばちゃんの家で牛飼っているから、ぜひ行こう」

 「赤ちゃん見せるとおばちゃんもきっと喜ぶね」

 →NHKスペシャル「病の起源 第6集 アレルギー〜2億年目の免疫異変〜」
 

 私は話しながら別なことが頭をよぎりました。

 もしかしたら私たちは政治や社会に対する免疫システムがうまく育たず、過剰なアレルギー体質になっているんじゃないのかな〜と。

 ちっちゃい頃に「痛い思い」や「ひもじい思い」をすることが少なくなったせいなのか、どうも世の中何事も極端で物騒な事件だらけになってしまったな〜と。

 かく言う私たち還暦世代ですら、こと政治に関しては、痛みを感じることなく「誇り」だ「名誉」だ「勇気」だと舞い上がる「好戦的アレルギー症候群」に陥りつつあるのではと。

 実は一週間前、包丁で親指の先を切ったんですが、痛いし不自由なことこのうえなし。

 指先切ったくらいでもこんなに大変なのに、ましてや。。。

 あんまり勇まし過ぎる人や事には気をつけたいな〜と私は思うのです。