「馬の湯」で混浴を思い出す

 正月休み最後の4日は、東鳴子の「馬場温泉」に行ってきました。入浴中のご老人からこの温泉の思いがけぬ来歴を聞きました。
 鳴子温泉日帰り放浪記、今年幕開けの湯です。

 この温泉は国道沿いにありますが、母屋が風情のある大きな古民家で、とても目だちます。

 この温泉に来るのは5年ぶりくらいでしょうか?

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 さて、この温泉には私にとって忘れられない思い出があります。

 今から25年くらい前に、当時小学生だった下の娘と一緒にここで日帰り入浴をしたことがあります。

 その頃は改築前で母屋も茅葺き、温泉ももっと鄙びた感じでした。

 その日、娘と一緒に「男入り口」と書かれた扉を開けて脱衣所に入り服を脱ぎました。

 そして湯気のもうもうたる、かなり小ぶりの浴室へと入ったら。。。

 なんと!そこは「おばちゃん」たちだらけの「かっぱ天国」でした。

 (え〜〜なんで!もしかしたら「ババ温泉」?)

 実はこの「馬場温泉」、当時は入り口だけ男女別の「混浴」だったのです。

 あわてて娘とともに湯船に身を浸しましたが、狭い浴槽ゆえ?おばちゃんたちの迫力に圧倒され続けです。

 つい照れ隠しにこんなんことを聞きました。

 「この湯はいったいどこに効くんですかね?」

 おばちゃんたちは笑いながら大きな声で答えます。

 「婦人科にきまってぺちゃ。アハハ」

 ますますひきつった照れ笑いを浮かべる私を、娘が冷ややかに見ていたような覚えがあります。

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 話は変わって、改築し本当の「男女別浴」になったこの温泉。

 泉質は「美人の湯」ともいわれる「純重曹泉」です。

 すぐ隣の「川渡(かわたび)温泉」は硫黄系の湯が多いのに、東鳴子温泉の湯は基本「重曹泉」です。

 あったまりが長く続くので冬には嬉しい泉質ですし、肌にも最高です。

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 浴槽には常連らしいご老人が一人いました。

 

 湯に浸かりながら、いろんな話を聞かせてもらいました。

 その方の話によると「馬場温泉」はもともと人ではなく「馬の温泉」だったらしい。

 湯主の名字は「遊佐」といって鳴子温泉初代湯守りを任じられた由緒ある一族です。

 この遊佐家は代々名馬を育て、皇室や塩竈神社に奉納していたそうで、ここはその馬の療養温泉だったのだそうです。

 おじいさんは、昔ここに長いプールのような馬用の温泉があったことを話してくれました。

 やがて馬の奉納が途絶し、人様の温泉に変わったそうです。

 それで「馬場温泉」という名前だったんですね〜。

 このおじいさん、硫黄が身体に合わないらしく、温泉は決まってここに来ているとのことでした。

 「汗がいつまでも引かなくて困んのしゃ〜」

 と、嬉しそうに困っていました。

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 途中遅い昼食をすませ、入浴から二時間後、自宅に着いた私もまだ「ほっかほっか」のまま、ソファーに爆沈でした。

 (昔の入り口だけ男女別「ババ温泉」も名残惜しかったな〜)

 なんてウトウト思いながら。。。

 きっと私もジジイになったせいですね。

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