りんごのレストラン物語

 朝のテレビでりんごを使った料理をあれこれ紹介していました。見ているうちに「りんごのレストラン」構想がムラムラとわきはじめました。
 私の女房の実家はりんご農家です。

 義兄がとっても研究熱心で、シャキシャキっとしたりんごの歯ざわりは市販のりんごとまったく異なります。

 その実家の嫁さんが、行くたびに自前のいろんなりんごデザートや菓子を出してくれます。

 私もりんごは大好きなのでたくさんほおばります。

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 ずいぶん前にこんなことを嫁さんに話しました。

 「これだけ広い敷地だし、スモールレストラン出したらおもしろいよね」

 「近所のおばさんたちと共同して運営したら、無理がなくて趣味と実益かねた楽しい仕事になるんじゃないかな」

 「看板は『りんごのレストラン』がいいね」

 嫁さんはこう言います。

 「こんな田舎に来る人いるかしら?」

 「今はその逆!田舎で辺鄙なところにある隠れ家的なお店ほど都会の人には人気があるんだよ」

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 その後この話は私の心の片隅にしまったままになっていました。

 ところが昨日の朝、りんごの料理番組を見て復活し、ムラムラと新しい構想が生じてきたのです。

 まだ生焼け状態、見通し不良の状況ですが、シミュレーションをかねてイメージをまとめるべく夢物語にしてみました。


りんごのレストラン物語

ひらめきの朝

 その朝、テレビでりんご料理の番組を見ていたノボ村長はハッとひらめいた。

 そうだ、「自然派シェアオフィス」と「りんごのレストラン」をドッキングさせるのだ!

 かねてから「仕事と人生をもっと重ね合わせたい」と思っていたノボ村長。

 ネットやブログであれこれ書き綴り、自分自身でその思いを確認したり構想を練り続けていた。

 少し極端な言い方になるが、こんな考えを持ち続けていた。

     

 「今や仕事は人生や生活とあまりにも分離し、枯れてきている」

 「巨大な建物のコンクリートの中で液晶画面とだけ対話しても、人間的なものは生み出されない」

 「何を創り出すかより、どこで創り出すかのほうが大切になってきている」

 「人は自然によって生かされ育まれている。自然と接しその価値を共有する人々との関係の中で生み出されるものこそが今や必要だ」

 「それぞれの仕事を続けながら、もうひとつ創造の場所を手軽に持てるなら、すばらしい幸せといえるのではないだろうか」

     

 彼にはそんな「新たな出発点」が必要だ、という想いが日々増しているのであった。

 自分自身にとっても、たぶん世の中にとっても。

 よし、実現可能そうなプランをいっちょう考えてみようか!

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スモールハウスからスタート

 幸運なことに、四千坪の敷地を持つ実家がある独創仲間がいた。

 高齢の母上が一人暮らしをしているが、空いている敷地を貸してもいいということになった。

 それから1年後、「みんなの独創村」LLPをつくり資金を調達して、いよいよ第一段階の計画が実行に移った。

 最終段階はやってるうちに決めることにわざとして、とにかく何かを始めようという考えだった。

 まず二つの建物を建築することにした。

 そのひとつめは元祖「スモールハウス」(創始者アメリカのシェーファー流)

 これは実際に河口湖畔でワークショップを実施した団体とタイアップして行うことにした。

 アメリカから実践者を講師として招き、全国から興味関心のある人たちを集め、有料のワークショップとして数ヶ月(週一ぐらい集まるペース)かけて製作するのだ。

 河口湖のワークショップでは、けっこうな参加費なのに(たしか交通費別で16万円)十数名(定員)の若者が集まったという。

 宿泊は鳴子温泉郷の旅館とタイアップし、温泉も楽しめるワークショップにした。

 スモールハウスは台車に載せ、トレーラーで牽引可能にしておいた。

 ここでそのまま使うも良し、ほしい人に譲るも良しである。

 このワークショップの目的は、全国にいる同じ感性の方々と知り合い、今後の構想やメンバーを豊かにしていくためだった。

 その目的は達せられ、ローカルの魅力に惹かれ、しかもガッツのある若者がこんなに多いのかと、改めて知ることとなった。

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ワークショップハウスの建設

 次に行ったのは、レストランにもオフィスにもなる基地ともいえる「ワークショップハウス」の建設であった。

 約40坪くらいのオープンでレトロモダンなカントリー風ハウスを建てた。

 ここがこれから「シェアオフィス」となり「りんごのレストラン」であり、「独創商品の開拓基地」となるのであった。

 そして周囲にはりんごの木を植え、自然農園(つまり畑)も広げていった。

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女性の知恵と力を大いに借りる

 ワークショップハウスは最初にレストランとして(あるいはカフェ)出発することにした。

 それは最終的にこの場所(村)をできるだけ開かれたものにしたかったからだ。

 さっそく、地元の料理研究家を講師に「りんごのレストランクラブ」をつくった。

 レストランでは主役でも脇役でもいいから必ずりんごが入った料理やお菓子だけを出すのであるが、そのレシピを共創するのだ。

 地元の料理好きのおばちゃんや姉さんたちに趣味と実益を兼ねたワークショップを継続してもらった。

 ここではクラブのメンバーが交代で10時から14時までのレストラン運営を切り盛りする。

 クラブで開発したメニューはここで実際に供され、あるいは商品としてネットでも販売することとなった。

 歩いて10分のすぐ近くに有名な歴史観光施設や駅があったので、遠くからの客も多く、またたくまに評判となり大忙しの日々があっというまにやって来た。

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自然派シェアオフィスとなる

 スモールハウス製作につどった仲間たちの縁やクチコミで、「りんごのレストラン」としてスタートした「ワークショップハウス」を「シェアオフィス」として使いたいという希望者がたくさん出てきた。

 「ワークショップハウス」は時間帯やレイアウトの工夫で「レストラン」+「シェアオフィス」+「ワークショップルーム」として多面的に活用できるのだ。

 そういう共生的使い方こそが実はこの企画の根本的なコンセプトなのである。

 Webデザイナーなど個人事業主はここをメインオフィスにしたいと思い、企業はセカンドオフィスとしてここを弾力的に使いたいと思った。

 その入居条件がユニークだったことが、同じ感性の方々を引きつけることとなった。

 その入居条件とはこうだ。

 ・パソコンは移動可能なノートパソコンだけ。

 ・10時から14時まではレストランのお手伝いをする

 ・畑仕事を必ずする

 ・そのかわり食事は食べ放題

 ・寝泊まりもしたい人は、スモールハウスを契約する

 仕事の中に生活、暮らし、つまり人生そのものをわざと持ち込むのである。

 スモールハウスワークショップ以降、地元の建築業者とタイアップして200万〜300万円くらいでスモールハウスを建てることができるようになった。

 新車1台くらいの価格である。これをリースまたは賃貸するのであった。

 浴室など居住のバックアップはワークショップハウスに初めから組み込んであったので安心だ。

 カラフルでユニークなデザインのスモールハウスは今や10棟も建ち、台車に載っているので季節ごとに敷地内を自由に移動して楽しんでいる。

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リアル「みんなの独創村」となる

 りんご料理からスタートしたこの企画、今では地元の食材ワークショップとしてもしょっちゅう利用されている。

 シェアしている住人はその企画に時折まじり、自分たちの仕事にもそれが好影響を与えている。

 やがて独創品を創出したいと思う様々な業種の方々が集まり、異業種、異世代、男女参画で自由闊達な「みんなの独創村」になっていった。

 ここで生まれた独創品をここで販売するスモールハウスショップもできた。

 ネットでも独創品を共創し販売する「みんなの独創村」サイトは人気で、特に都市部や海外で評判となっている。

 会社も個人も同じように独創品を開拓できて同じように販売できるから、個性的な人にはとても魅力的なのだ。

 スモールハウスは規格品ができ、休閑地をもつ人が都市部のこのような企画を行う会社や団体と提携し、同じような村を手軽に作れるようになってきた。

 都市部から移住、あるいはハイブリッドオフィスとして使う若者が増えてきた。

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十数年後の風景

 十数年後、ノボ村長始め「みんなの独創村」開拓者メンバーも歳をとってきた。

 ノボ村長もたまにやってきて、りんごのレストランでアップルパイなど食べながら、大きくなったりんごの木を見て感慨にふけっていたりする。

 こにいると身体の調子が悪いときなどはだれかが助けてくれるからありがたい。

 古民家のような母屋も今やギャラリーやシェアオフィス、いろり端集会所、宿泊施設などになり時々泊まっていったりしている。

 奥の座敷二間は、東京の有名なIT企業がローカルオフィスとして契約している。

 スモールハウスをお店にしている人もいて、切り絵工房とかケーキ屋さんとか、中には移動販売基地として使っている人もいる。

 基本的なスモールハウスは二名住めるし、ここだけに住んでいるという人は実は少ないので数名でシェアしている人が多い。

 村の運営は株式会社化されたが、株式会社とはいっても自営業者の集まりのような自由であったかい雰囲気があった。

 メンバーのみんなで「土の家」「わらの家」なども作り、美味しい新作メニューを雰囲気を変えてそんな場所で食べるのも実に楽しい。

 「露天風呂風共同浴場」や奥の林には子供の遊び場、ふれあい動物園までみなでつくりみなで適当に?管理している。

 地元の地域振興策にもなっているので、メンバーが不足の部分は地域でバックアップしてくれて、それが地域交流をも促している。

 職業時代のノウハウを若者支援に活かしたり、趣味をもっと極めようとする定年退職者もぼちぼち増えてきてたまに来ているようだ。

 なによりも女性が多いので国家論議や政治論議などお堅い話は敬遠されて、頑固なおんつぁんたちの喧嘩が少ないのがとてもいい。

 今ではこんな「みんなの独創村」が宮城県だけで5カ所もできている。

 互いの村同士シェアハウスをシェアし合うこともしていて、楽しいことがたくさんできる「みんなの独創村共和国」である。

参考
 →みんなの独創村って何?

 (スモールハウス村)
 スモールハウス村の夢
 「自然派シェアオフィス」道中記
 「孟母三遷」の社会
 小さいことも素晴らしい!
 素敵なスモールハウス
 「小さな家」の大きな夢

 (「愉快な町」)
 愉快な町の「ユカイ塾」
 愉快な町のエネルギー
 愉快な町の「地域コンビニ」
 愉快な町の「住宅街」
 愉快な町のショップハウス
 愉快な町のヘルプハウス
 愉快な町 その2
 愉快な町 その1