ITは強者の剣か、弱者の杖か。近未来のニッポンで「IT」は思わぬことに活用されておりました、という妄想物語です。
最近若い世代の男性がセックスにあまり興味を持たなくなってきた、という記事を読み考えさせられました。
その反対に、政治家や経済界のおっちゃんおばちゃんたちのニッポンチャ!チャ!チャ!の誇りにまみれた空元気。。。
近未来のニッポン、はたしていかなる国となっているのやら?
あくまでも妄想ですのであしからず。
ノボ村長の妄想物語
未来のシルバー戦士たち
この話は自称「近未来タイムトラベラー」の方から聞いたのだ。
その方は、今政府系の精神病院に閉じ込められているらしい。
彼の未来の話になんらかの信憑性がある証拠かもしれないと私は思っている。
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近未来のニッポンはこうなっているらしい。
武器輸出三原則やら憲法九条やらをかなぐり捨てて、「フツウの国」になったと思ったニッポン。
ところが「フツウの国」のしきいははるかに上がっていた。
フツウの国とは「常に戦い続ける国」、そのような覇気と武力を併せ持った国のことになっていた。
そして名前とは裏腹に「フツウの国」とは「セレブ国家」というエリート国家を意味するようになっていた。
セレブ国家とは、具体的には「ハイテク軍事国家」のことだった。
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ニッポンの威勢の良い為政者と大企業の経営者にとって願ったり叶ったりの変化であったが、心配なことがひとつあった。
それはここ20年近くにわたって増え続ける若年男性のセックスレス志向であった。
「英雄色を好む」がごとく、敵を打ち負かす情熱は女性を征服する情熱と比例している。
ところがニッポンの若き男性に、特に顕著に「情熱低下現象」が蔓延していたのだった。
積極的平和主義の戦士として戦える若者がいないということは、車があっても運転手がいないのと同じであった。
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近未来で国の舵を握っている、昔なら「ネオコン」と言われた「ヤマト帝国党」の政治家たちはあるアイデアを思いついた。
それは「戦うものつくり国家ニッポン」というプロジェクトであった。
昔から「ものつくり国家」として「世界の職人」ともいうべき名誉と実益を得ていたニッポンであった。
今や「ものつくり」にITは欠かせないものとなっている。
そのITをニッポン独自のアイデアで軍事兵器に応用し、世代間ギャップを埋めるというものだった。
実は、もっともっとおぞましい目的が隠されていたのだが。。。
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その頃のニッポンはIPS細胞の臨床応用が進み、さらに認知症の薬が進化したおかげで元気な年寄りが増えすぎていた。
かろうじて維持していた月3万円程度の「全老齢者一律支給年金」もまもなく崩壊が近づいていた。
こんな金額でもなんとか生活を維持できたのは、培養ミドリムシによる食料生産が実現していたことが大きかった。
為政者は考えた。
「年寄りは自分が戦いに行かないと知っているせいもあるが、若者よりはるかに好戦的だ。
IT技術を駆使すれば、老人を半ロボット化し「戦士」にできるはずだ。
もちろん名誉の戦死を遂げていただければ、なおさらニッポン国家へ貢献してくれたことになる」
さらに、おおっぴらには言えない恐ろしい本音が為政者にはあった。
「なんと効率的で大義義名分の立つ『世代浄化』になることだろう。
ナチスのガス室による『民族浄化』とは雲泥の差だ!」
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為政者たちも老齢ではあったが、自分たちは先祖代々エリートであり、中枢であり、参謀であったので、自分たちがIT戦士になるなどは考えもしなかった。
経済界のお偉方も、政界の彼らと切っても切れぬ関係だったので歴史の例に異なることはなかった。
やがて街のあちこちにこんなポスターが貼られ始めた。
「誇り高き老人よ!若者の未来のために、ニッポン国家のために、いざ悪との戦いへ! ハイテクマッスル!マッスル!」
背中に背嚢ならぬバッテリーを背負い、マッスルスーツを着た老人たちが、「積極的平和主義」の栄えある戦士として進軍させられた。
そうそう、彼ら戦士にはついでに「痛散湯」と合成麻薬「エクスタシー」も無料支給されたらしい。
老人たちは、痛みからも身体の不自由さからも、さらにうつ症状からも一時的に逃れられるとあって、志願する者も多いということだった。
諸外国からは「ラストサムライ!」ともてはやされ、老人たちも最初は気分がいい。
まだ高齢化が深刻でない国では、そんなふうにおだてながら自国はといえば無人兵器化を進めていた。
予想できなかったことではないが、老齢の女性もやがて戦士として参戦することとなった。
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案の定、戦死者はとてつもなく多かった。
半分は死んでもらわないと財政計画が破綻するから、わざとそれなりの装置だったのだ。
国は、建前をたもつためにマスコミを使って檄をとばしていた。
「戦士たちよ、正義と平和を勝ち取るためにこらえてください!機器の改善を日々重ねております」
為政者は戦死した老人たちを「ニッポン英雄神社」という国家神社を建立し、八百万の神々の一員として祀りあげた。
この頃は、幸福なんとか学会とかの宗教団体も国営化されていたので、出征前に「極楽渡航許可証」まで配られていた。
あの世が近い老人たちには、科学的根拠など不要だった。
多少いかがわしくても来世の保証はなによりの贈り物だった。
まるでイスラムのジハード(聖戦)に加わる少年兵士たちのようであったのは皮肉なことだ。
内地にとどまる守られし若者たちの心もとても劣化していた。
「どうせ老人はまもなくあの世行きだし、俺たち若者の幸せのために死ぬなら本望じゃない!」
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この後の未来はどうなったのか、自称タイムトラベラーも知ることはできなかった。
でも、まだそんな未来よりはましな想像力が残っているこの世界の私はこう想像する。
「若者はきっと悟ることだろう。
自分たちもIT戦士として最後は殺されて墓場にいくことになる恐怖と空しさを。
そんな未来の若者はセックスレスどころか、自分の存在価値にすら関心を持たなくなるだろう。
他人の幸福のために生きる喜びを失った世界に、人は決して生きる意味を見いだせないだろう。
そんな未来の遠くないある日、ニッポンで、ニッポンジンによる恐ろしいテロ、つまり国家の自殺がなされるかもしれない。
その方法は2011年3月にみなが知ったのだから」
たしか、私が話を聞いたタイムトラベラーは「コマツ」という名字で、「サキョウ」だったか「ウキョウ」だったか、そんな名前であった。
ふざけて書いているのではないんです。
こんなブラックSFを書かねばならぬ時代がいよいよ近づいてきた、と感じるからなのです。。。
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ノボ村長の妄想物語
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