漫画で出会った珠玉の言葉

 友人から借りて読んでいる漫画本の中にとてもすばらしい言葉を発見しました。私はとても勇気づけられました。
 永島慎二の『漫画家残酷物語』を読んでいます。


(貸してくれたゴリランジェロ氏が撮影)

 永島慎二をカリスマのように慕う方々にとって、この本はバイブル的存在のようです。

 読みながら何十年も前の「青春時代の感性世界」にタイムスリップした感じになります。

  →漫画少年だった友人のバイブル

 収録されている「嘔吐」という作品の最後にこんな文章が引用されていました。

 この言葉は、私の心に強く深く突き刺さりました。


ロバート・ルイス・スティーブンソン

「若い人々のために」

 真に幸福であること

 それは私たちがいかに

 終わるかではなく

 いかに始めるかの問題であり

 また私たちが何を所有する

 ではなくて何を欲するかの

 問題である。

  →スティーブンソンは「宝島」「ジキルとハイド」の作者として有名です。

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 「嘔吐」は自分自身にとっての理想の漫画を追求し、夢破れ、のたれ死にをしていく若き漫画家の物語です。

 しかしこの珠玉の言葉を最後のページで読んだとき、悲惨ともいえる前のページがまったく違うように感じられるでした。

 血を吐き凍った路上でただ一人行き倒れていく主人公が、「幸福」に「崇高」に見えたのです。

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 この「珠玉の言葉」は、なんて深いことでしょう!

 いつか死にゆく自分自身にとって

 結果なんかどうでもいいことだ。

 生きている間に

 何かを希うことができて

 それに挑戦したことこそが

 幸福だったのだ。

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 永島慎二は自分の作品をきちんと遺すことに無関心だったそうです。

 この文章と出会って彼の思いが少しわかったような気がします。

 
(「漫画家残酷物語」裏表紙には彼の後ろ姿が)