ゲーテ「同時代、同業の人から学ぶ必要はない」

 ゲーテは穏健な思想を持った方ですが、最初に極端な裏返しの話をすることがよくあります。その後に続く内容をよく理解させるためなのでしょう。「同時代、同業の人から学ぶ必要はない」と言い切ったのはなぜなのか?と引き込まれてしまいます。
 「ゲーテの深い言葉」第21話を書きました。

 まったく、ゲーテの言う通りだと私は思います。

岩波文庫『ゲーテとの対話』下巻p157
1827年4月1日

 「生れが同時代、仕事が同業、といった身近な人から学ぶ必要はない。何世紀も普遍の価値、普遍の名声を保ってきた作品を持つ過去の偉大な人物にこそ学ぶことだ。
 
 こんなことをいわなくても、現にすぐれた天分に恵まれた人なら、心の中でその必要を感じるだろうし、逆に偉大な先人と交わりたいという欲求こそ、高度な素質のある証拠なのだ。」

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 最近ゲーテの本を並行して読み進めていますが、本を読んでいるという気がしなくなってきました。

 私がゲーテの時代にいて、ゲーテのお話や行動を遠巻きに聞いたり見たりしているように思えることが多くなってきたのです。

 『ゲーテとの対話』『ヴィルヘルム・マイスターの修業時代』『詩と真実』(彼の自伝)が、みな関連していて、私の頭の中に立体的な視野を生み出してくれます。

 まさに「本は本にあらず、古今東西の人と会うことなり」を実感する昨今です。

  参考→「ゲゲゲのゲーテ」より抜粋
   →ゲーテ「趣味について」
   →ゲーテ「わが悔やまれし人生行路」
   →ゲーテ「嫌な人ともつきあう」
   →ゲーテ「相手を否定しない」
   →ゲーテの本を何ゆえ戦地に?
   →ゲーテ「私の作品は一握りの人たちのためにある」
   →ゲーテ「好機の到来を待つ」
   →ゲーテ「独創性について」
   →ゲーテ「詩人は人間及び市民として祖国を愛する」
   →ゲーテ「若きウェルテルの悩み」より抜き書き
   →ゲーテ「自由とは不思議なものだ」
   →ゲーテ「使い尽くすことのない資本をつくる」
   →「経済人」としてのゲーテ
   →ゲーテ「対象より重要なものがあるかね」
   →ゲーテ「想像力とは空想することではない」
   →ゲーテ「薪が燃えるのは燃える要素を持っているからだ」
   →ゲーテ「人は年をとるほど賢明になっていくわけではない」
   →ゲーテ「自然には人間が近づきえないものがある」
   →ゲーテ「文学作品は知性で理解し難いほどすぐれている」
   →ゲーテ「他人の言葉を自分の言葉にしてよい」
   →ゲーテ「同時代、同業の人から学ぶ必要はない」
   →ゲーテ「自分の幸福をまず築かねばならない」
   →ゲーテ「個人的自由という幸福」
   →ゲーテ「喜びがあってこそ人は学ぶ」