秋の野原は陣取り合戦

 セイタカアワダチソウとススキ、秋の野原は植物の戦いをまざまざと見せてくれます。人間社会にもそのまま当てはまるような秋の陣両雄の合戦です。

『詩集ノボノボ』より

秋の野原は陣取り合戦

 栗駒山の紅葉は中腹まで下りてきた 
 
 里の木々が色づくのももうすぐだ

 絶好のサイクリング季節

 いつもの土手道を 夕日に向かってペダリング


 川原や野原は一面が 黄色と白のツートンカラー

 セイタカアワダチソウとススキの陣取り合戦だ

 ここ数年 黄色が白を圧倒していたが

 今年は黄色六分に白四分 

 ススキが少し盛り返している感じ


 判官びいきのわけではないが

 私はススキの応援団

 セイタカアワダチソウはどうにも苦手

 どう猛な繁殖力と 矢じりのような攻撃的相貌

 政治や社会のある集団を連想してしまう


 ススキ派の私はだからいつも負け戦

 昭和生まれの枯れススキ

 あ〜、あらゆるところがいつの日か

 このど派手な黄色に染まってしまうのか

 と、横目でため息をついていた


 ところが ある文章を読んでハッとした

 北米からやってきた黄色のエイリアン

 最近少し態度を改めているそうな

 他の植物を絶滅させるために

 根から出していたアレロパシー

 自分しかいなくなったために 自家中毒

 それで背丈も短くなってきたらしい


 もうひとつ

 ライバルのススキが免疫をつけたらしい

 かつて日本の秋を 一手に引き受けてきたススキだが

 セイタカアワダチソウに押され押されて

 まもなく絶滅か、と心配されていた

 ところが苦節十数年

 黄色の根っこの出す毒薬に

 耐性、いや逆に栄養とする新種がうまれ

 カド番脱出の希望が出てきたらしい

 それで今年の秋場所は 六分四分の戦いらしい

 
 もうひとつ嬉しいことがある

 セイタカアワダチソウの 知られざる善行を知ったのだ

 私にはジンクスがあって どういうわけか

 私が嫌っているものが必ずのさばってしまうのだ

 ところが善行を知ったから もうジンクスは破れそう

 善行はミツバチに対して行われていた

 晩秋の花蜜が乏しい時期に

 冬を越すミツバチの貴重な蜜源になっているらしい

 調べたら 葉や茎は食用や薬用にもなるらしい


 というわけで

 毎秋恒例の 黄色と白の陣取り合戦は

 私の人間修行にもなっている

 猛く勇める威勢人たちは まるでセイタカアワダチソウ

 敵がいなくなると共喰いするから心配ない

 盛者必衰のことわりなり

 忘れちゃいけないのは 彼らの善行

 いいところをきちんと見てあげれば

 生態系での身の程を きっとわきまえることだろう


 秋の野原の陣取り合戦

 来年はどんな勝負になるだろう

 五分五分や 少し勝ったり負けたりや

 そんな 棲み分けバランスの絶妙を

 人間に教えてくれたら 嬉しいな〜

 →ノボ村長の「詩集ノボノボ」