ノボノボ童話集「森の言葉」

 とっても寒い朝でした。会社に向かう車窓から見る桜の木々は、むき出しの枝を肘張らせ、寒さに耐えているように見えました。となりに孫娘が乗っていたらこんな質問するかもな〜?なんて夢想して一篇を書いてみました。

ノボノボ童話集

森の言葉

 初冬のある日、車窓を見ながら娘は聞いた。

 「おとうさん、どうして木は寒い冬に服を脱ぐの?」

 「う〜〜ん、それは木が暑がりだからさ」

 初夏のある日、車窓を見ながら、また娘は聞いた。

 「おとうさん、どうして木は暑い夏に服を着るの?」
 
 「う〜〜ん、それは木が寒がりだからさ」

 「?」

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 娘は自分で調べてみようと思った。

 春夏秋冬、娘は近くの森へ入ってみた。

 森と戯れてみた。

 ある日、娘は「わかった!」と感じた。

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 ある日、おとうさんは娘にたずねた。

 少し恥ずかしそうにして。

 「木について、なにかわかったかい?」

 「わかった」と娘が答える。

 「じゃあ、おとうさんにも教えてくれよ」

 「う〜〜ん、それは無理みたい」

 「どうして?」

 「言葉はわかるまで使うものでしょう。

  わかってからは、言葉はいらないわ」

 「?」

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 今度はおとうさんが森に入ってみた。

 ある日、おとうさんは「わかった!」と感じた。

 おとうさんらしく、少し理屈を考えてみた。

 「娘はきっと「森の言葉」を聞いたに違いない。

 それは、声や文字の言葉じゃないものだ」

 お父さんはつぶやいた。

 「森の言葉は森に聞けか。。。」

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