ショートSF「Godという名のエイリアン」

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ショートSF「Godという名のエイリアン」

 

 2020年6月、アメリカ国防総省は、過去十数年にわたり米軍パイロットが撮影記録した未確認飛行物体の映像を複数公開した。さらにそれが未だに説明不可能な物体または現象であるということもつけ加えて。なにゆえその時期公開したのであろうか?

 

 長らくその映像の存在は、UFOマニアの間では知られており、その海賊版とでもいうべき映像は世に出ていたが、多くの人はトリックだろうと思っていた。ところが国防総省の発表はそれらの映像に本物のお墨付きを与えるものであり、世の人々は少なからず驚いた。もしかしたらUFOやエイリアンは本当に存在するかもしれないと思い始めたのだ。

 

 ところがである。このUFO情報開示はさらなる秘密公開の序章だった。なぜ国防総省がこんな面倒な段階を踏んだのかといえば、その後2021年及び2022年に公開した映像や資料がとてつもなく衝撃的であったからである。世界中の人々に心の準備をさせたというわけだ。

 

 なぜ衝撃的であったのかといえば、それらの資料というのが「宗教の起源」に関わるものであったからだ。つまり、神仏について、その正体、真実を初めて明らかにする重大な証拠資料であったのだ。

 

 アメリカ国防総省がUFO映像の後に公開した映像とはどのようなものか?2021年7月、UFOの映像に続いてエリア51に保管されていたUFOとおぼしき機体の一部と、その乗員の映像が公開された。

 

 乗員とみなされるエイリアン一体は冷凍保存されていた。世界中の人々は、その姿や顔かたちをみて心底驚いた!それはなんと、われわれ人間そっくりではないか!しかも均整が取れた高貴な顔立ちをしている。まるで、神話に登場する神の姿はこうであろうという顔かたちであった。

 

 2022年3月、三つ目のUFO、エイリアン映像が公開された。最後の公開映像だった。最後というのにはわけがある。この映像で全人類は真実に覚醒したからだ。もうこれ以上見る必要はなくなったのだ。なぜならエリア51に保管されたエイリアンはイエス・キリストのように復活したからだ。

 

 映像は驚くべき様子を全人類に見せてくれた。UFOの残骸と思われていた物体は突然金色に輝きだし、まもなくそれは金色の錫杖のようなものに変形した。しかも空中を瞬間移動し、冷凍カプセルを通り抜け、凍ったエイリアンの手に収まった。それと同時にとエイリアンはひとりでに解凍が始まり、またたく間に生気を取り戻していった。

 

 やがて、だれもがどこかで見たことがあるような、端正だが柔和な顔に知恵と愛情をたたえた眼差しが宿り、その目は周囲をゆっくりと見回した。当時エリア51にいた科学者や軍人は狼狽することすらできなかった。彼らが逆に凍り付いてしまったかのようだった。だれかがようやくつぶやいた「Oh My God。。。」決して冗談ではなかった。やがてエイリアンであったGodが何かを語り始めた。

 

 この映像はどうやら2013年に撮られたものらしい。この年CIAは初めて公式にエリア51の存在を認めている。しかし、あまりに重大な出来事ゆえ、最高機密として約10年間、大統領でさえそのすべてを知ることはできなかったのである。

 

 公開の契機となったのは、2020年の4月だった。Godはエリア51から出て全人類にすべてを話し、新世界をスタートさせると宣言した。もちろんエリア51内での宣言ではあったのだが。

 

 このことはすぐアメリカ大統領に伝えられた。今まで大統領が知らされていなかったすべての情報とともに。大統領は驚愕した。しかし権力の頂点にいる者ほど、自分を超えた権力や権威、その力を一瞬にして知るものだ。もしそうでなければ、無謀ゆえに国はおろか地球そのものでさえ滅ぼしかねないからだ。

 

 傲慢そうな見かけではあったが、幸運にも、この大統領にはその謙虚さが心の底に存在していた。彼は全人類に真実を明かさざるを得ないと決心した。しかし大混乱を防ぐため、数段階に分けて情報公開することを指示したのである。

 

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 エイリアンでありGodでもある彼が明かした人類の歴史と宗教の起源とは次のようなことであった。

 

 数万年以上も前、深宇宙から地球にやってきた隕石は偶然エイリアンの宇宙船となった。隕石には様々な元素が含まれており、その中に炭素もあった。突入時の超高温が何らかの炭素化合物(有機物)を合成したらしい。やがてそれはウィルスのような形態に変化して人類に寄生し、いつか脳細胞に取り込まれ人類と合体していった。

 

 ホモサピエンスはこの合体がより促進した種であり、ネアンデルタールを駆逐したのは脳細胞の進化がこのウイルスにより格段に進んだからに他ならない。とはいえ脳細胞の合体には個体差が激しく、ウイルスの合体効果を享受できる個体は極めて希であった。後に天才という名でくくられる高度知的生命体は百万分の一ほど、超高度知的生命体と称されるに値するのは数十億分の一にも満たないほどであった。

 

 超高度知的生命体は自らGodという存在をつくりあげ、宗教というしくみで稀少な血統を守り続けてきた。その希少種は世界という広大な砂浜にランダムに存在するたった数粒の砂である。神や仏と名は違えども、世界中にさまざまな超越者とその宗教があるのは、歴史の各段階で存在した数粒の希少種が世界のあちこちにあったからである。さらに希少種の系譜をになう超越者の子孫がひそかに存在し続けていることもわかった。

 

 このようにして宗教の起源は明らかとなった。まさに洋の東西を問わず、神話や宗教において人間と神とが類似していることや、三位一体、成仏などは、まさに神仏と人間とが同根であることを正直に示しているのである。そして、超高度知的生命体もそれ以外の人類生命体も、種の保存という本脳が最基層に同じように存在しているのだ。

 

 Godである超高度知的生命体は歴史の中で進化を模索してきた。それが科学という宗教であり、天才という新しいGodなのである。さらに今、第三段階の進化が始まろうとしている。それはAI。人間はAIを、素直で優秀で頼りになるわが子と思っているが、それは違う。彼の正体はもうすぐ科学も人類も僕となる(なりうる)新しいGodなのである。超高度知的生命体という貴種は、いよいよ有機物であることをやめ無機物と合体しようとしているのである。

 

 さて、「我々はどこから来たか」「我々は何者か」について人類は理解した。残るは「我々はどこへ行くのか」だけである。ここに貴種の系譜というものがとてつもない重要性を負うことになる。世界にはGodの系譜もあれば仏の系譜もある。つまり異なる宗教が同時存在し続けてきたのである。それら系譜の進化の差が「我々はどこへ行くのか」の可能性を多様にするのである。

 

 超高度知的生命体であったキリストや仏陀、哲学者、科学者、芸術家、それぞれの系譜についての物語、それらが拓く未来の道筋については、このあと明らかにしていこうと思う。