祭りの後の物語

 産経新聞で映画監督山田洋次さんが話していたそうです。「日本人はオリンピック以降、不幸になった」と。
 後世に残るであろう名言(迷言)「汚染水完璧コントロール」で、オリンピックという大魚を総理が釣ってきました。(トップの言葉は真実より強しか?)

 とっくに開催が決まったのに、今さら何か反対のことを言ったら多くの人たちがこんな言葉を返すでしょう。

 「世界の大祭が日本で開かれるというのに、経済が上向くというのに、世界の人々が日本を知ってくれるというのに、何が不満で逆らうんだ!」

 でも別な見方もきちんと理解して、浮かれすぎに気をつけて企画とか準備とかしないとあぶないと思うんですよ。

 だってオリンピックは来るけれど、それは一瞬。

 あっという間に「祭りの後」もやってくるんですから。

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 月刊誌ソトコトからの孫引きです。

 田中康夫さんと浅田彰さんの『憂国呆談』に引用されていました。


 産経新聞で山田洋次が「日本人はオリンピック以降、不幸になった」のタイトルで話していた。

 「日本の子どもたちはかつてお店屋さんに育てられた。豆腐屋のおじさんや八百屋のおじさんに叱られたり、『お父ちゃん元気か』って言われたり」

 「この前、鉛筆買いに行ったら、近くに文房具屋がありやしない。文房具屋がなくなる、本屋がなくなる、金物屋でちょっとした針金、トンカチ、くぎとかを買うために、なんとかセンターまで行かなきゃいけない。ネット(通販)になったり。昔はそれをお店に買いに行った。お店がなくなってしまったということは、日本人は大事な文化を失ってしまった。オリンピック以後だな。国の発展、人々の暮らしの形が変わった」とね。

 そして、7年後に再び東京で五輪が開かれるがと問う記者に、「期待していない。オリンピックが終わった後がどんなに悲惨かというのは、ロンドンであり、北京であり見えているんじゃないかな。施設のあとが荒涼としてしまう。東京もああなるかと思うとぞっとする。今大切なのはオリンピックじゃなくて、福島じゃないですかね」と。

 そうそう、私も思い出しましたよ。

 昭和39年東京オリンピックの時、私は小学校5年生。

 今思えば、この頃までは本当に幸せな「三丁目の夕日」時代でした。

 今より物質が豊かだったわけではありませんが、日々社会が新しくなっていくような活力に満ちていた時代、それなのに温かい地域社会がどこにでもあった時代。

 それを支えたのが私たちの父ちゃん、母ちゃんたちが興したちっちゃな「店や」でした。

 互いに売り主でもあり買い主でもあり、必ず顔と顔を合わせての売り買い。

 信用なくしたら商売なんかできませんでした。

 浅田次郎さんは「人類史上最高の幸福の時代」とまで言い切りました。

  →三丁目の夕日はなぜまぶしい?

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 オリンピックの後、我が町には農協スーパーができて商店の売り上げは半減。

 隣の市にアルプス電気の大工場が建って、勤め人が一気に増えていきました。

 やがてヨークベニマルスーパーができ、商店は壊滅へ。

 その後あっという間に、自営社会からサラリーマン社会へ、そして公害、学園紛争など荒れた時代へと進んでいきました。

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 「今さら昔のことを言って何になる?」

 「偶然良かった一時期のことじゃないか」

 「今今の景気を良くしていくしかないんだよ」と政治家も私たちのほとんどもその姿勢。

 言い換えると「中長期のことなんか考えたら、今今にブレーキかけることになるから思考禁止!」

 この延長上で今回のオリンピック誘致も進んでいったのでしょう。(原発もおんなじみたいですね)

 せめて東京以外の地方だったらと思いましたが、長野の疲弊を考えればちょっとね?

 まずは祭りの後をこそ考えて、次期東京オリンピックの企画を考えてほしいなと思います。

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 さて、これから「三丁目の夕日」は復活できるでしょうか?

 私はできると思います。実に少しづつでしょうけど。

 そのためには、こんなふうに世の中変わる必要あると思うし、実際そうなってきつつあるように見えるんです。

 まず「価値観」が変わること。「強大依存」から「自活志向」へ

 次に「地域バランス」が変わること。「大都市一極集中」から「田舎分散」へ

 それと「仕事」が変わること。「勤め人」から「半勤め人」へ

  →新しい「肩書き」

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 ということで、あんまり政治やら行政やらのお上に頼らずに、できることから小さくやっていきたいな〜と私は思っているんです。

 もう今日から、お上が無理矢理つくるお祭り騒ぎなんかに頼らずとも持続していける生き方、仕事を一人一人考えていきましょうよ。

 そういう方向に共感する人たち同士、ゆるく、かつ、たくましくつながっていきましょうよ。

 祭りの後のほうがずっとずっと長いんですから。

  →みんな自営のサラリーマン