50年前の東海村で繰り広げられている世紀のゲンパツ決戦!勝つのはサクスケか?それともアクスケか?いったい私たちの未来はどうなるのでしょう。
前々回はこちら→「子ども忍者サクスケ参上!」
前回はこちら→「サクスケvsアクスケ」
アクスケの忍術というよりは妖術「いいくるめの術」の前に、サクスケ危うし!
地表にいる大人たちは、みんなアクスケの術中にはまってしまった。
こんな声が地表から聞こえてくる。。。
「エライ人たちが絶対大丈夫って言ってるんだから心配ないじゃん」
「仕事も増えるし、お金もくれるし、いっぱいいろんな施設もできるし、反対する人の気が知れないわ」
「廃棄物だって燃やせばいいんでしょう。きちんとした施設で。なんだって科学で解決できるんでしょう、今は」
サクスケもさっちゃんも泣き顔になってきた。
「お兄ちゃん、もうみんながアクスケやゲンパツヤの言うことを信じてるわ。さっき私たちが空の上に見せた未来の光景も人ごとみたいに感じているわ・・・」
「さっちゃん。悔しいけど僕らの負けかな・・・。次に繰り出す忍術がもうないよ」
アクスケと、江戸時代なら越後屋とか悪代官であったろう政治家、マスコミ、経済評論家、電力会社のエライ奴らは黒船の上から軽蔑したようにサクスケとさっちゃんを見下ろしている。
(それみろ、ひよっこが!われわれエリート大人や科学ってもんをなめるんじゃないよ)
いったいこれでこの戦いは終わりをつげ、50年後の福島、そしてもっと悲惨な未来へと続いていくのだろうか?
ところがこの時、思いがけないことが起こったのだ!!
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突然、黒船が変な振動を起こし始めた。
やがて煙突から<ドッカーン>という大音響とともに白煙が噴出したのだ!
黒船はバランスを失い、船上はてんやわんやの様相となった。
ゲンパツヤはあわてて叫んだ。「ニンジャども、俺たちがあぶないぞ。下の連中なんかどうでもいから俺たちを助けるんだ!早くしろ!お前たちは俺たちを守るために雇ってるんだ。高い金で」
ゲンパツヤ同士でも、われ先に船から脱出しようと大喧嘩がはじまった。まるで「蜘蛛の糸」さながらだ。
原子力大臣ねらいのアクリキスギタロウ(悪力杉太郎)や総理大臣ねらいのマカソネ(任損根)がアクスケを呼ぶ。
「おーい、アクスケ早く俺を助けて遠くへ連れて行け!残ったお前らの仲間は命をかけて大爆発を止めるんだ。そのために雇ってるんだ。あ〜ちくしょう、どれだけの金を俺は損することだろう」
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アクスケの顔色が真っ青に変わったのはこの時だ。そしてこの火急の時にもかかわらず、彼はしばし呆然と立っていた。
アクスケは一瞬にして悟ったのだ。
(俺はなんということをしてしまったんだ。。こんな畜生よりも劣るゲンパツヤに加勢して、とんでもない災害の張本人になろうとしていた・・・。どうしてこんな情けない奴に俺は成り下がってしまったんだ・・・)
そして二人身を寄せ合い、呆然として事態を見ているしかなかったサクスケとさっちゃんの方へ近づき、こう言った。
「サクスケ、俺が間違っていた。いますっかり目が覚めた。こいつらは金のことしか心にない大悪党たちだ。おれも悪だがこいつらまでは心は腐ってね〜」
「サクスケ、さっちゃん。俺を手伝ってくれ。何とか俺の力を発揮してこの事故を解決してみせる。たとえ俺がどうなろうともいい。罪滅ぼしだ。今までのことは許してくれ」
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サクスケとさっちゃんは思わず涙が出た。
「サクスケ兄ちゃん、ほんとによかったね。アクスケさんが『忍者の魂』を取りもどしてくれて」
サクスケは泣き顔を妹に見られるのは恥ずかしかったので、後ろを向きながら「ウン」と一言、頭を下げた。
でも、どうやってアクスケはこの黒船の「メルトダウン」を防ぐのだろう?彼にはどうにも考えつかなかった。
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アクスケはきびきびと動きだした。
まず彼は、手下の忍者たちに指示して、黒船で騒いでいるゲンパツヤを、彼らが背負って地上に降ろすよう指示をした。
サクスケはびっくりした。「アクスケさん、こいつらを助けるんだね。でも、どうして?」
アクスケは硬い表情で答えた。
「こいつらはたしかに巨悪だ。しかしやはり人間だ。しかも効率病とか自惚れ病とか金銭毒に冒されたあわれな病人なのさ。俺が改心したようにこいつらだって病気が治ることだってあるだろう」
さっちゃん「アクスケさん、ステキ!江戸に帰ったらファンクラブつくるわ!」(まったくこの大変なときなのに・・・)
サクスケとアクスケの共同作戦が開始した。
「いいか、サクスケ。使う術は『分身の術』だ。何万人もの忍者を出して、この黒船を高い空のうえまで持ち上げるんだ。地球の外へ運ぶんだ!」
サクスケはびっくり!初めて使う術だし自信はあまりない。でもやらなきゃ!
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黒船はみるみる高く上がっていった。しかし・・・
彼らの分身の術では限界があった。富士山の高さぐらいでストップした。
アクスケは黒船の底を悔しそうにこぶしでたたきつけながら、悩み苦しんでいた。
いったいどんな手があるだろう・・・
サクスケも必死に考えた。忍術小学校の図書館で読んだ本とか、校長先生の話とか・・・、じいちゃん忍者の話とか・・・それらを思い出しながら。
突然ひらめいた!
「アクスケ先輩、あの忍術はどうでしょう?ほら忍者学校の伝説となっている『大明神の術』ですよ!」
アクスケの顔が一瞬輝いた。「そうか、その手があった!」
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しかし「大明神の術」は忍術師範と呼ばれる人でも使える人は数少ない超難度の忍術なのだ。
「迷ってる暇はない。サクスケ、俺を支えろ!」
「ナムハチマンダイミョウジン・・宇宙より龍をよこしたまえ。エイコラサー!!!」
体をねじり上げるような過激な術だ。何十回かの挑戦の後、突然空に黒雲がわき上がってきた。
そして、それは宇宙の果てからやってきた。
漆黒の巨大な龍が、のたうち回るように、大変な勢いで!!!
やってきた。黒船の近くへ。
「ナムハチマンダイミョウジン・・龍よ!黒船を宇宙の果てへ運びたまえ〜〜〜〜。エイコラサー!!!」
形容できない大音響とともに龍は黒船を口にくわえ、そのまま宇宙へと飛び去っていった。
しばらくして、黒雲の中にぼんやり見える太陽のそばで、流れ星のような光線が一瞬走り空を照らした。
地球は救われた。少なくてもこの時代の地球は。
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サクスケとさっちゃんは再び、仙台のあまりキレイとはいえないデザイン事務所に戻ってきた。
ゴリランジェロが涙を流して喜んだ。「おめ〜らが帰ってきてくれたのがいちばん嬉しいよ。たとえ結果はどうあろうともな」
「おめ〜らのことが心配で江戸の忍術小学校へ時空電話を何回もかけたんだ。そしたら校長先生が言うんだよ。サクスケ!『サクスケはきっとやります。信じていてください』ってさ」
サクスケとさっちゃんは顔を見合わせ微笑んだ。
それから机の上の生キャベツを見て、今度は顔をしかめてしまった。
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さて、彼ら子ども忍者の活躍のおかげで、私たちが生きる現代はどう変わったのか?
テレビでフクシマを見ればやはり事故はそのまま続いていた。
ゲンパツヤも同じようにいる。似たような名前だが。
悪を正、杉を松、任を中、とかに置きかえるとじつにそっくりなお偉いさんがいる。あるいは「いた」。
さらに、カイをウリ、夕を朝、年を日に読み替えると今の新聞社そのものだ。
でも一体何が変わったというのだろう?
ゴリランジェロには何かが変わったという実感はまったくなかった。
ゴリランジェロはサクスケに聞いてみた。
サクスケはこう答えた。
「ゴリ父さん、見えにくいところでこの時代も変わったんですよ。どうして思い切り変わらないのかというと、そうなると歴史が壊れていろんなものが消滅するからなんです」
サクスケはテレビを指さしてこう続けた。
「いいですか、今映っているフクシマのこの映像、よく見てください。多くの人が白い防護服で作業していますが、少し違う人々が見えませんか?」
ゴリはMACの見過ぎでかすむ目をこらしてよく見た。
そこには、白装束の忍者たち、そう、あの「アクスケ」たちがみんなにまじって除洗作業に精を出しているではないか。
さらに、新聞を見ると今までよりも「脱原発」の記事が多くなっている。
彼らは現代ではなく未来を救ってくれたにちがいない、とゴリランジェロは理解した。そして満足した。
「お前たちは俺がつくったキャラクターさ。誇りに思うぜ。今度はきっと『A級スナック』のキャラクターにしてやるからな」
さっちゃんがすかさず「え〜!それはA級(永久)に無理だと思うわ」
仙台のあまりキレイとはいえないデザイン事務所は笑いに包まれた。
彼らが江戸へ帰ったあと、ふと事務所の壁を見たらこんな貼り紙があった。「サクスケも大人になったもんだな〜」とゴリランジェロは一人つぶやいた。
(終わり)
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<あとがき>
宮崎駿さん言うがごとく「児童文学はやり直しがきく話である」と思います。この言葉を心に入れて書いたらこんなストーリーになりました。児童文学と同じように「人生」も「科学技術」も「やり直しがきく」ものでありたいと思います。未来の子ども達のために。
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「書きなぐり連載小説 子ども忍者サクスケ参上!」
プロデューサー:アガ
脚本:ノボ
賛助出演:ゴリランジェロ、リョウ、ラン、ダイミョウジン
撮影協力:ノックス
※「サクスケ」は忍者サスケからヒントを得て、ゴリランジェロ&アガのデザインチームが生んだB級スナックのキャラクターです。が、もろもろの事情で没になったキャラクターです。
※ブログ写真「龍」の書はアーティスト「原 賢〓(けんりょう)」氏の作品をお借り致しました。謹んで感謝申し上げます。
※出演にご協力いただいた皆様に心より感謝(お詫び)申し上げます。スミマセン。
※このブログシリーズはfacebookでfacebook仲間の強い執筆要請にて、やむなく急ぎ制作されました。作品品質についてはなにとぞご容赦を・・・。