「人生」と「しごと」は一体のものだと思います。「しごと」が貧しくなったり、「しごと」の創出が少なくなったとしたら、「人生」も貧しくなるのではないでしょうか。
そんな危惧を抱いて「みんなの独創村」をはじめました。
ある方が話していました。「20世紀最大の損失は『経済価値』以外の価値を見いだせなかったことだ」と。
「20世紀最大の損失とは」
なんとか生きているうちに、今のわが仕事を「人生」と重ね合わせたい、あるいはより良く重なり合った「新しいしごと」を創りたい。
そんな大それた(?)想いを抱いて、日々少しづつ模索を続けています。
「私は今のままで十分、余計なお世話。」という方も多いでしょう。
しかし、世の中は日々急速に「今のままで十分」とはいえない社会に変化してきていると思うのです。
だからこそ「新しいしごと」を考え始めないと変化にのみ込まれてしまい、大切な一人ひとりの「人生」が損なわれてしまうと思うんです。
「新しいしごと」というのは、「しごとそのもの」よりも「新しいしごと観」とか「新しいしごとの方法」が、まず大切だと思うんです。
そのような模索の一環として、この前の日曜日に、那須の「非電化工房」を見学し、藤村先生のお話も聞いてきました。
「非電化工房」見学会
先生はこうおっしゃっていました。
「今、地方には仕事を生み出す力がない。それは仕事やリスクを大きく考えすぎているからだ。もっと簡単にしたら若い人がのってきてくれるかもしれない」
参考になったお話は多々あります。それは先生の著書を読んでもらうことにして、当日見たり、炉辺で語られたことから感じた「新しいしごと」のヒントをいくつか記そうと思います。
住み込み修業
「非電化工房」には常時住み込みのお弟子さんがいます。自ら望んで入り、数ヶ月ここで実際に何かをつくるお手伝いをするのです。
この敷地にある数々のユニークな施設は、彼らによって作られたものです。
お弟子さんには給金は出ません。ただし、寝る場所と三食が供給されます。
今いるお弟子さんは3人、うちひとりは20代の女性です。彼女はここに来る前はトラックドライバーをしていたそうですが、それまでのしごとや人生に何か違和感を感じ、ここに来たそうです。
私が感じたのはこんなことです。
「何のために『しごと』をしていますか?」と聞けば、私もそうですが、ほとんどの人はまず、「生活するため(食うため)です」と答えるでしょう。
「食うため?」ならば、このような「住み込みしごと」だって十分だということです。
そしてこのような働き方、受け入れ方なら誰でもどこでも無理なくできるということです。
昭和のある年代まで、このような丁稚奉公や住み込み修行は多くの業種でありました。ここに新たな発想を加えて「新しいしごと」として復活できるのではないでしょうか?
3.11では多数のボランティアさんが来てくれました。(今でもそうですが)
この「ボランティア」も、「しごとの仕方」の観点から見れば「住み込み」とどこか似ています。
「ボランティア」をすることによって自分自身が救われた、という方も多数います。それは人生としごとが重なったということです。
「私たちのために仕事がある」のなら、ボランティアも「新たなしごとスタイル」として、大いに発展させられるのではないでしょうか?
良いしごとをしているのに「人を雇うお金がない」、反対に働く気持ちは満々でも「雇ってくれるところがない」
こんなミスマッチがますます増えている現代、「お金を実物に置きかえた『住み込みしごとスタイル』」は積極的に考える余地が十分にあると思います。
外国雑誌の翻訳サービス
これは実際に行われたビジネスです。
『MOTHER EARTH NEWS』という雑誌がアメリカで刊行されています。
http://www.motherearthnews.com/
この雑誌はアメリカで買えば1.67ドル、日本のアマゾンで買えば1180円。
すばらしい内容なので、日本語版を発刊したいと思う人がいました。ところが資金がない。無理な宣伝もしたくない。リスクも負いたくない。
そこで先生が提案したのがこんな方法。
まず、ホームページやブログなどで、日本語版がほしい人(会員)を無理なく集める。内容に賛同している人が多く、口コミ(Netコミ)ですぐ集まったそうです。
つぎに、この雑誌を主宰者が直輸入して販売、あるいは各人が直接サイトから英語版を購入してもらいます。
ここからがノーリスクビジネスのキモです。
会員、つまり会費を払った人はホームページに載せた日本語翻訳を読むことができる。しかもその翻訳はボランティア的に行ってくれる人たちがたくさんいる。
何らの宣伝・営業活動なしで会員は増えていくだけでしょう。なぜなら「もと」の価値が高いものだから。
ウッド・ボイラー製造
これは、まだ提案だけのビジネスのようです。
那須でもご多分にもれず、植えすぎてあんまり役に立たない「杉」で困っているとのことです。
薪ストーブを使っているならそこで使えばいいじゃないか、というふうに考えますが、密度が低いために燃焼効率(持ち)があまり良くはないそうです。
そこで、地元の若者に提案しているのはこんなビジネス。
まず、家庭で使うエネルギーの50%は暖房と給湯なんだそうです。
そこで、杉を細かく切らずに長い棒状のまま燃やせる「ウッド・ボイラー」を製造して販売する、それもノーリスクで。
そのボイラーは給湯、暖房に使ううえに熱電素子を使って「おまけ発電」もする(コージェネレーション)。
実際「非電化工房」の薪ストーブには鉄板の上に小さな扇風機が置かれて回っているんですが、それがこの熱電素子を使って、熱エネルギーを電気エネルギーに変換して動いているのです。
このビジネスの「新しいしごとの方法」は、エコの思想に賛同する人に出資してもらう。出資者にはうまくいかないときは無理せずに止める旨最初に了解してもらう。
(これはミュージック・セキュリテの『被災地ファンド』に似た発想です。)
「あったかい被災地応援ファンド」
出資金を使って地元の鉄工所にストーブを製作してもらい販売するが、もし一年度でも赤字になりそうだったら、その時点でいったん事業を中止する。決して借り入れなどの無理はしない。という方法です。
「非電化カフェ」の全国展開
これは、ここ「非電化工房」で建設が始まりつつあります。
先生はジンバブエで見た家屋にとても感激しました。とても貧しい国なのになんてステキな家に住んでいるんだ!と。
そのイメージで「非電化カフェ」を作るのです。それも50万円以内で!!
カフェを始めたいという若者はとても多い。だけど、店を出すにはとてもお金がいる。50万円でできるなら、どれほど多くの若者が職を得ることができるだろう。
ユニークなのは、この「非電化カフェ」は全国に展開するということ。つまりこれらの店のオーナーたちによる相互扶助ネットワークを創るということなんです。
それは、たとえば、ブラジルの無農薬栽培珈琲の流通であったり、さまざまな独自商品の共同仕入れなど。
最もユニークなのは、「イベント」をネットワーク化するということなんです。
12の「非電化カフェ」が全国にできたとしましょう。
一か月に1回の分担で各地の「非電化カフェ」がイベント企画を回り番で行う。それは子ども向けのイベントであったり、大人向けのワークショップであったり。
そのイベントを継続することによって、ファンを増やしていく。こういう店には「よい客」しか集まらないというメリットもありますね。
ひとりで企画し続けること、ユニーク商品を一人で仕入れることは難しいことですが、志を同じくするオーナーたちが共同すればきっと続きます。
新しい価値を自分にも、さらに多くの人にも気づかせる「非電化カフェ」。これは創造の畑です。
私も挑戦しますよ!
感激して、先生に聞いたんです。「いつごろできる予定ですか?」
先生曰く「私たちは『予定』とか『目標』とかは考えないんです。(そんなのに縛られるのは無意味だから)けっこう衝動的ですから」
ジンバブエのいえの写真と、「非電化カフェ」のパースをどうぞ。
「ムーミンハウス」のこととか「ストローベイルハウス」とかの話、その他諸々はまた次回に。
電気を減らすって、実に愉しいことなんだ〜!!