嬉し涙の「三陸生わかめ」

 少しづつ春が近づいてきたようです。ここ東北、三陸の被災地にも。一昨日の夜、隣の奥さんがわが家を訪ねてきました。小さなビニール袋を持って。
 奥さんが持ってきたのは、南三陸町で採れたての「三陸生わかめ」でした。

 「3.11の節は本当にお世話様でした。実家からぜひ渡してくれと頼まれたんです。根っこ付いたりしたままの、ほんとにそのままのわかめですけど、ぜひ食べてくださいって」

 実は、実家といっても津波に流されてなくなってしまい、今は南三陸町から60キロも離れた大崎市に家を借りているそうです。

 そんな中、南三陸町でもようやく漁業のしごとが細々と復活し、昔の漁業仲間が共同で、あのおいしい「生わかめ」の収穫をはじめたんだそうです。

 ご実家の方々は、大崎市から南三陸町まで、わざわざ遠路を通って従事されているそうです。

 収穫したわかめはすべて「漁協」に納入するので、今回いただいた生わかめは、そっと特別に持ってきてくれたもののようです。頭が下がります。

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 思い起こせば、昨年の3月12日、前日の津波から間一髪、家族全員車で逃げてきた日のことを思い出します。

 二週間ぐらい、お隣に同居しておりましたが、みなさんの表情はとても暗いものでした。。。(当たり前ですが。。。)

 その頃は、隣もうちも停電だし断水だし大変だったんですが、うちは農家の実家やおばちゃんの畑があって野菜や貯蔵していたりんごなどをおすそわけできたんです。

 そのときの感謝ということでこの貴重な「生わかめ」を頂戴したわけです。

 ゆうべ食べたんですが、柔らかくてうまいこと、うまいこと!

 そして、食べながら、なんかホロッとしてきました。。。

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 この方々を何とか支援できないかとあれこれ考えた日々。

 →孔子が牛を買った話

 →カムバック市場を創る

 →おれたちパエリアン!

 実際にボランティア活動に通った女房や娘とは対照的に、気持ちだけあれこれ悩んだ私でした。。。

 個人で、あるいは会社の支援キャンペーンで、ささやかな出資や購買支援などを続けては来ましたが、あれこれ考えた企画はどれもやれずじまいでした。

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 そんな一年がいつのまにか過ぎていました。そして今年もいつもの年と変わりなく、春が来てくれそうです。

 人間は実にたくましいものです。

 たとえはあまりそぐわないかもしれませんが、まるで「アリ」たちのように、些細なことをせっせせっせと行い続けます。

 ひょいと見てみれば、いつのまにかちゃんとしたものができあがっている。そんな感じと似ています。

 三陸生わかめの柔らかさを味わいながら、あの頃のこと、そして被災した方々のたくましき営みと、今だ多き困難に思いを新たにしました。

 私の支援企画はこれから本番にしていきます。きっと。