三人のロボット学者

 ロボット大国であるらしい?日本。先端的なロボット研究をしている日本の学者三人の鼎談を一、二年前NHKで見ました。そこには科学者の三典型がありありと。。。

 この番組、NHKオンデマンドを探しても見つかりませんでした。

 探し方が悪いのかな〜?

 つたない記憶をたどりながら話を進めることにします。

 三人の学者とは、大阪大学の先生、東北大学の先生、早稲田大学の先生、名前は申し訳ありませんが失念してしまいました。

 わかりやすく、「大阪さん」「東北さん「東京さん」というニックネームで書かせていただきます。

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 大阪さんは、人間そっくりの顔や表情、しぐさの「アンドロイド型ロボット」研究をしています。

 東北さんは、介護の現場で役立つ「介護型ロボット」研究をしています。

 東京さんは、人間の運動そのままの「人間動作型ロボット」を研究しています。

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 どの先生も国際的に有名で、最先端の研究と目されているようですが、その中でもひときわ目立つのが「大阪さん」のアンドロイド型ロボットです。

 タレントのような若い女の子や、大阪さんそっくりのアンドロイドが、まるで本物の人間のように表情をつくるのです。

 類は類を呼ぶのか、先生方のお顔も、ご自分の研究しているロボットに雰囲気が似ています。

 大阪さんは、ユニークで岡本太郎さんのような気迫を感じさせる、「挑戦者」的なお顔をしています。

 東北さんは、まじめでおだやかながら、理知的な聡明さを感じさせる高校の「先生」っぽい雰囲気があります。

 東京さんは、研究一筋の研究者、地味ですが熱い情熱を心に秘めた「学者」タイプに感じます。

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 鼎談のテーマは、たしかこんな内容でした。

 「ロボット研究に制限はあるか?」

 東北さんが言い出しっぺだった気がします。記憶だけで書いてますからそのへんご了解を。。。

 東北さん「ロボット研究に制限は必要だ。戦争に利用されたり人間に害を与える可能性がある研究は制限されるべきだ。人間の幸せにつながる研究だからこそ価値がある」

 大阪さん「制限は有害だ。限りなき挑戦。何が出てくるかわからないからこそ科学(技術)は有意義だ。目的や行き先を決めて研究を貧弱化させるべきでない」

 東京さん「制限はしなくていいと思う。人間にどこまでも近づけること。ひたすらそのための努力」

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 番組の中では、大阪さんが熱くなって制限に反対していました。

 途中で東北さんは苦笑いして、それ以上深入りした議論はしないようにしていました。

 東京さんは、表情を変えず、純粋な研究者としての意見しか言いませんでした。

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 なにか、「科学者の三典型」を見た気がしました。

 それは「原発を巡る科学者の態度」とも重なる気がしました。

 それでよ〜く覚えているのです。

 大阪さんは、エドワード・テラーのような原子力時代幕開けの頃に多かったであろう「科学技術盲信(猛進)系科学者」

 東北さんは、湯川秀樹さんのように人文科学的教養を持った「反省的人文系科学者」
 東京さんは、フォン・ノイマンのような頭のいい「クールな実務系科学者」

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 どれがいいとか悪いとか、一概には言えません。

 科学の研究にとって、「突破力」「感性力」「論理力」というのはみな必要な「力」でしょうから。

 しかし、3.11後の今、もし科学者に「感性力」が欠けていたとしたら致命的だなと思います。

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 なにゆえに「感性力」という要素は科学者に必要なのか?

 「感性力」は何に対するものなのか?

 そこのところが、今の科学では置き去りにされているのではないでしょうか?

 吉本隆明氏は昨年亡くなる前に、こんな内容のことを話しました。

 「科学技術や知識というものはいったん手に入れたら元に押し戻すことはできない。どんなに危なく退廃的であっても否定することはできない。それ以上のものを作ったり考え出すしか道はない」

  →変てこりんなお話

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 ほんとうにそうでしょうか?

 ブレーキをかけてきた歴史もあるのではないでしょうか?

 ブレーキをかけることも、アクセルを踏むことと同様の積極的で前向きな科学者の行動である。

 そんな認識はどのようにすれば芽ばえるのでしょうか?

 科学者以外の人で、だれが「ブレーキのない車」を望む人がいるというのでしょうか?

 最近リオ会議で発言して話題になっているウルグアイのムヒカ大統領なら、きっとこう言うでしょう。

 「わたしたちは『未知の発見』をするためにこの世に生まれたのではない。『幸せ』になるために生まれてきたのだ。」
  →リオ会議でもっとも衝撃的なスピーチ:ムヒカ大統領のスピーチ

参考
 アルキメデスの末裔
 未来ケイサツ