昨年「星雲賞」を受賞した『去年はいい年になるだろう』という日本のSFを読みました。著者が同世代ということもあり、あれこれ共感し抜き書きをしました。
「と学会」会長でもある山本弘さんの本です。
『去年はいい年になるだろう』は、私が読むこの方の最初の本でした。
何せタイトルが意表を突いていて、しかも時空旅行っぽい。
私の好みに合っていました。
衝撃の歴史改変SF
24世紀からやってきた”彼ら”の目的は、
「人を不幸から守ること」だった・・・・彼らの名前はガーディアン
なんと彼らは
人間そっくりのアンドロイドだった。
関西弁のセリフ、著者の実生活らしき様々なエピソードや悩み、9.11など実在した事件。
これらがとてもリアルで、感情移入してしまう要素となっています。
最初は気軽に読んでいましたが、人類の業ともいえる「戦争」について、著者の真摯な思いがひしひしと伝わってきました。
思わず、読みながらページを折り、後で書き写しました。
書き写した文章は別にアップしておきましたので興味ある方はご覧ください。
ここでは、最後に近いページに書かれていた主人公とアンドロイドの会話を紹介します。
私もこの主人公と同じ思いです。
そして、つくづく感じたのは次のようなことでした。
「人には誰にも克服できないことがある。
だから私たちは、その問題を起こさないように避けていくことしかできないのだ。
しかしその弱さがあるゆえにこそ、私たちは人間なのだ」
文中の「カイラ」はAKBのメンバーのようなガーディアンと呼ばれるアンドロイドです。
これが「人間」ってやつさ
「いいや、君らはいつもそんなふうに考えるんやないか。犠牲者を数でしか考えへん。こっちの方が犠牲者が少ないから正しい。。そう言うんやろ!?」
「間違ってると言うの?」
「ああ、間違ってる!人数なんかどうでもええんや!僕にとって大切なんは、真奈美と美月の二人だけや。他の人間なんかどうなってもかまへん。もし百万人を殺せば二人を生き返らせてくれると言うんやったら、喜んで殺したる!」
カイラの表情がこわばつた。「……あなたがそんなことを言うと思わなかった。もっと論理的な考え方をする人と思っていた」
「あいにくやな。これが人間の考え方なんや」
そう、人間はガーディアンとは違う。すべての命を平等とは考えない。広島に原爆を落とした爆撃機の搭乗員のことを考えてみるがいい。彼らも故郷では良き夫だったり、愛する娘がいたりしたはずだ。彼らにとって、見知らぬ一四万人の日本人の命より、身近な数人の命の方がずっと重かったはずだ。
それこそが戦争やテロや迫害が根絶できない理由だろう。ほとんどの人間にとって、見知らぬ人々の生命など紙切れほどの価値もない。遠い国で何万人が殺されようと、我が子が風邪で熱を出したことの方が一大事だ。見知らぬ何十万人が迫害で苦しもうと、自分自身のダイエットやクレジットの返済やデートに着ていく服の方が重大な問題だ。
それが人間というものなのだ。
参考
不自由こそ幸せのもと