好き嫌いで評判の会社

 取引先も社員の採用も「好き」か「嫌い」かで決める。そんな会社もあるんですね。まるで落語に出てくるやせ我慢の頑固じじい。こんな人や会社がまだ日本にある、というのは実にうれしいもんです。
 新聞でこんな記事読みました。

 なんか胸がすく感じがしまして、談志の落語で聞きたかったな〜なんて思ったもんです。


朝日新聞 2013.8.6

(へぇな会社)すべては好きか嫌いか

■中里スプリング(ばね製造)

 あなたが町工場の社長だったら、こんな時、どうしますか。

 まず、第一問。

 たくさん注文をくれるけれど、「ありがたく思え」と偉そうな取引先がいる。あなたの社員たちは、会社のためを思って、イヤイヤつくっている。

 では、第二問。

 社員をひとり募集したら、ふたりが応じてきた。ひとりは、見るからにバリバリ稼いでくれそう。もうひとりは、戦力にするには時間がかかりそうだけれど、採用したら喜んでくれそうなので好感がもてる。


 群馬県甘楽(かんら)町にある中里スプリングの社長、中里良一さん(61)の答えは、こうだ。

 第一問。そんな取引先には、「さよなら」を告げる。大企業だろうがお構いなし、これまでに49社と縁を切ってきた。

 第二問。めちゃくちゃ喜んでくれそうな人を採用する。これまで、家庭の事情で中退に追いこまれた女子大生、職を転々としてきた50歳すぎの男性、といった人を採用してきた。

 この会社のすべての判断基準は、好きか嫌いか、なのだ。

 「学校で好きなクラブ活動をして、好きな人と結婚したでしょう。なぜ、仕事のときは、損得を考えて我慢するんですか」

 20代のころ、中里さんは無名商社の、営業マンだった。顧客に「帰れ」と水をかけられ、接待を強要された。29歳で家業をつぐ。「日本一たのしい会社」にしたくて、すべてを好き嫌いで決めることにした。

 まわりから冷笑された。半面、全国から、講演依頼が絶えない。

 取引先と縁を切るだけでは、倒産だ。だから中里さんは、講演の地で飛び込み営業をして、売り上げを取り戻している。門前払いもされるけれど、社員に楽しく製品のばねをつくってもらうためだ、苦にならぬ。

 入社28年の部長、森本勉さん(52)は、これまでに、取引先を2社、切ってもらった。「そのたびに、もっと真剣に仕事をしよう、と決意を新たにしてきました」

 好き嫌いの経営をはじめて32年、取引先は100倍の約1600社にふえ、すでに全都道府県を制覇している。

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■社員のつぶやき(課長・飯塚裕次さん 33歳)

 社長はお父さんみたいな存在。高卒で入って社内結婚をしたら、給料が上がりました。若い男女がいるという証しなので、社内結婚の誕生は社長の夢だったそうです。社長から、私は「風」と呼ばれています。ばねづくりを極め、はやく「風神」と呼ばれたい。

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 1950年創業、社員数21人。つくるばねは2万種をこえる。午後3時までに注文がくれば、午後5時には出荷する緊急対応が得意。

 勇気があるな〜、ユニークだな〜、うらやましいな〜、と思う私がもう変なのかな〜?

 「好き嫌い」って、小難しく言えば「全人格的判断」、「野性的判断」、「感性的判断」。。。

 実は、社会においても一番大切にしなければいけないことじゃないかな〜って思えるんですよ。

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 ところが今の社会では、好き嫌いを直接表しちゃだめ、それで判断しちゃだめ、ということが強くすり込まれています。

 そうなるとどうなるか?

 みんな「顔なし」になってしまうのです。

 心の中ではまったく正反対のことを考えているのに、人から何を言われてもゲロッとして表情を変えない。。。

 そんな人たちがたぶんネットで(匿名で)とても攻撃的な書き込みに走るのでしょう。

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 「好き嫌い」を自分の持って生まれた「癖」と思わずに、「自分自身」の一番大事な判断基準と考え、それを磨き育てていくのがいいと思うんですよ、私は。

 そうすると、「へ理屈」主役の世界から、様々な理屈の出発点である「感性」こそ主役の世界になると思うんですね。

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 とは言ってもたしかに難しい。。。

 だけど、特に経営者は「好き嫌い」を通せる会社にしよう、という思いを捨ててはいけないと思うんですね。

 そのためには会社規模をあんまり大きくするのはマズイと思うんです。無理な経営を強いられていきますから。

 これから社会に出る人たちは、できればいつか自営を目指す、または小さな会社に入って自由度をあまり失わないというのがいいと思うんですね。

 そんなことはできないとか思わない方がいいと思うんですよ。 

 だって私たちの親世代までは、農家にせよ商店にせよほとんど自営だったんですから、実際にあった社会なわけですからね〜。

 そんな自営をしながらでも、みんな子供らを大学まで出してくれたわけですよ。

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 さて、もしそんな社会に変わったとしたら、世の中にはこんな言葉が多く見受けられるようになるのではないでしょうか。

 「それは美しいこと?」「それは善きこと?」「それは心地よいこと?」

 反対に減っていく言葉はこんなものでしょう。

 「それは儲かること?」「それは強いこと?」「それは楽できること?」

 今の経済社会は、これらの言葉のバランスが一方に偏りすぎていますからね〜