岡田監督の懸け橋

 NHKニュースナインを久しぶりに見たら元サッカー全日本岡田監督のインタビューがありました。この方の見識にはいつも感心させられます。
 日々テレビから遠ざかるこの頃です。

 見るのは「ごちそうさん」とか、スカパー映画チャンネル(昔映画の録画)だけです。

 なにせNHKが公共放送ではなく、国営放送になりつつある今、見るべきチャンネルはもうありません。

 高い受信料払っているのがわれわれなのに、NHK会長さんとやらは自分の「客」を勘違いしたようで、「国が右というものを左とは言えない」って言うんですから。。。

 (「客」である)私たちの多くもそれを変なことと思わなくなっている、というのはもっと重病ですけどね。

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 しかし、かなり息苦しくなってきたと思われる制作現場の中で、目立たぬように抵抗しようとする人もまだいるようです。

 もしかしたら、そういう人の配慮があっての岡田監督の出演だったかもしれません。

 岡田監督は、2012年から昨年末まで中国プロサッカーチームの監督でありました。

 インタビュアーの質問は「どうして中国サッカーチームの監督になったんですか?」「やってみて何を感じましたか?」です。

 反日、排日感情が燃え上がっていたあの頃の中国になぜ?、と私も興味を惹かれました。

 5分くらいのインタビューでしたが、思い出すまま書いてみます。(私の記憶によるものなので、あしからず)

「日中の懸け橋に」

 ずっと以前ヨーロッパ・サッカーに強い衝撃を受け、どうしたら勝てるんだろうと考える自分がいた。

 新たなことに挑戦したくなるのが自分の習性だ。

 ハンティントンの『文明の衝突』にあるような危機が、東アジアで強まっているように思い危惧していた。

 そこで、一方的に知らされる情報ではなく、自分自身で中国人の生の心を感じたいと思った。

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 二年前排日運動が最も激しいときに中国チームの監督になった。

 日本の大手スーパーチェーンなどの店舗が襲撃されたりした。

 しかし、日本の店や会社を襲撃するような過激な考えの中国人はほんの少数だ。

 ほとんどの人は生活することだけで手一杯なのだ。

 同じチェーンでも襲撃されなかった店も多いのだが、それが日本で報道されることはなかった。

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 反日教育を受けてきたせいで、ほとんどの人は日本を嫌いだと思っているのは事実だ。

 しかし日本人の私でも、中国人に(サッカープレーにおける)心を伝えればよく理解してくれる。

 が、彼らの行動を変えることは難しい。

 それは彼らには日本とは比較にならないくらい生活のリスクがかかっているからだ。

 そのため生き方がしたたかになるのだ。決して悪いことではない。

 それは、中国の長い歴史の興亡の中で育まれてきたたくましさでもある。

 日本人は正義だなんだかんだと固いから、中国の歴史の中にあったらきっと滅んでいただろう。

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 私たちは中国に反日的、好戦的な印象を持っているが、中国も日本も母たちは100%子供を戦争に行かせたいとは思っていない。

 しかし政治というものが、ほとんどの人が願うことと逆に向かうのはどうしてだろうと思う。

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 二年前反日が盛り上がっていた頃、空港前に大群衆がいてそこでタクシーを降りることになった。

 正直怖かった。

 しかし、実はその群衆は私の誕生日を祝ってくれる人々だったのだ。

 そのとき私は自分の考えがまちがっていたと思った。

 今までの活動は、自分自身のため、自分自身の挑戦と思ってやってきたのでは?

 ほんとうは自分のためにではなく、すべては選手やファンのために、ということこそ活動の原点であるべきだったと。

 16チーム中11位、翌年12位の成績しか残せなかったが、、それでもネットには好意的な記事が多くホットした。

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 私たちの年代(注:彼は56歳)は、戦後のもっとも幸せな時代に生きさせてもらった。
 
 でも私たちは、私たちの子供たちにどのような世界を遺せるのだろう。

 少しでも良き世界を遺していきたいと思う。

 自分の子供に対する言い訳みたいなものかもしれないけど。

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 政治以外の人とのつながり、それが最後に世界を救う大事な絆だと思う。

 スポーツや文化、芸術のつながりを国境を越えて深めていくことが大事と思う。

 スポーツが国威発揚や民族の団結に利用されやすいものであることも事実です。

 しかしこれからのスポーツは逆に国や民族を超えた「人間」価値を高めていくことが大事であるな〜と考えさせられました。

 このような見識を備えた「真のスポーツマン」が日本にいて、私たちにそれを気づかせてくれるというのはとても心強いことです。

参考
 一流のスポーツマン