夏祭り、浴衣、江戸の町

 昨日今日、わが大崎市古川は夏祭りです。通りには屋台や出店が並び、小さな子ども連れの家族や若い子たちでとっても賑やかです。なかでも彩りを添えるのは娘さんたちの浴衣すがた!きっと江戸の町もこんなだったのかな、と思いが巡ります。歩き方は現代風ですけどね。
 ちょうど杉浦日向子さんの江戸本を数冊読んでる昨今でした。「江戸アルキ帖」という画文集の中にはこんな絵が。カカア天下の江戸時代、女性のしぐさも生活も今よりずっとダイナミックだったみたいです。

 さて、私の好きな江戸時代スポットが東京都江東区深川にあります。それは「江東区深川江戸資料館」。私は四回行きました。その中で思い出に残る話がひとつあります。

 2002年12月のことでした。姪の結婚式に招待され東京に行った折、私と父で訪れたときのことです。下の写真の八百屋を見ていたら薄暗い奥に人がいるようなシルエット・・。父と「蝋人形まであるんだね」と話していました。実はこの資料館は凝っていて朝から晩までの時間も再現しているんです。そのため明るさが微妙に変わるのです。この時、実際は奥が暗かったんです。

 そうしたら突然蝋人形が声を出しました!「もしかして宮城県の方ですか?」と。ようやく本物の人間が座っていたんだとわかり「ええ、そうです」。彼は「私の出身地の訛りのようでとても懐かしく思って声をかけたんです」と言いました。それから彼の身の上話を隣の長屋で三人火鉢を囲んで聞きました。

 「私は宮城県雄勝町の出身なんです。東京の大きなメーカーに就職し海外勤務まで経験しました。ところが会社のリストラで職を失うことになりました」聞けば私と同じ年齢ぐらいの方でした。

 「一生懸命勤めてきたのにこのようなしうちをされ、もう空しくてしょうがありません。でもこれから生き方を変えてみようと思い、故郷に戻って釣り宿でもしようかと考えました」

 「そして、女房に家族で田舎に帰ろうと言ったら、『あなただけ行ってくれない』と返されました・・・」

 彼は話を続けました。「会社にも見放され、家族もこんな関係しかなかった。空しくて、よくこの資料館に来るんです。ここに来るとなんとなく故郷のことを思い出すんですよ」

 私も父も聞くだけでした。そして彼の言葉「ありがとうございました。同じ訛りの方と会えて嬉しかったです」に、なんかほろりとさせられ、帰路につきました。

 しかし、彼の故郷である宮城県石巻市雄勝町は3.11大震災の津波にのみ込まれてしまいました。彼は今どうしているのでしょうか・・・