ジョブズの「感動の軸」

 ジョブズは「消費者は自分の欲しいものをわかっていない。形にして見せなきゃいけない」と考えていたと思います・・・と、星野佳路さん=星野リゾート社長が今日の朝刊で語っていました。

 ・・・iPodやiPhoneで成功しましたが、ジョブズが本当にやりたかったのは、iTunesでの音楽配信やアップルストアでのソフト配信だったと思います。機械をつくるだけじゃなく、僕たちのライフスタイル自体を変えようとしたんです。

 ジョブズは「消費者は自分の欲しいものをわかっていない。形にして見せなきゃいけない」と考えていたと思います。消費者に迎合するのではなく、「こういうものをつくりたい」という軸をしっかり持っていた・・・

 リゾートでも同じです。「どんな旅館に泊まりたいですか」という調査をして、答え通りの旅館をつくってもお客さんはこない。どんなサービスを提供したい、どんな感動を与えたいという軸が必要です。軸の重要さをジョブズから学びました。

 う〜ん。これなんですよね。私たちがまねしたくてもできないのが・・・つまりアット言わせる「独創」のことなんですが。

 なぜかというと二つあって、ひとつは「考えつかない」、もうひとつは「遠慮が多い」からだと思うんです。

 私は「独創」には兄弟がいると思っています。下から「工夫」「改善」「改良」「独創」の四兄弟です。

 日本人は「工夫」や「改善」はとても得意、メカニックなら「改良」まではお手のもの。でも「独創」というところは苦手なんですよね・・・。

 いったいなぜなんでしょう?難しくなってきました。「考えつかない」「遠慮が多い」で、少しだけ試論です。

 「考えつかない」理由は、星野さんのいうとおり「こういうものをつくりたい」という意欲が希薄なことが一番だと思います。あるものをそのまま受け入れるということが、良きにつけ悪しきにつけ私たちの天性になっているんでしょうね。たぶん。

 「遠慮が多い」理由は、人との摩擦をなくしたい、という気持ちの傾向が強い民族性なんでしょう。だから、みんなの意見を聞いて改善を続けていく。なるほど使いやすくはなるけど「ワオ!」は生み出せない・・・。

 そんな日本人でも、「独創」をなした人は数少ないながらも存在します。が、あまり知られていないかも。そういう人々や彼らの独創を発掘してみたいものです。

 たとえばこんなおもしろい「ドクソウ(独走?)」もありますよ。
 「パラメトロン計算機」 
 「電気座布団」
 「東洋医学物理療法自動診断機」

 でも「感動」というか「感性」を強く揺さぶる独創は、日本では発見しにくそうですね。「ハヤブサ」なんかは独創かな?あればぜひ教えてください。

 これからの時代、もう少し日本で増えてほしい企業家とは、もっと感性豊かで、もっと過激で、もっとわがままで、もっと人の笑顔を欲しがる人ではないでしょうか?計算性能や競争性能が高い人よりも。

 なぜかっていうと、楽しいし安全じゃないですか。笑顔が生まれる「独創」というものは。それができる方々は「経営者」じゃなくて「経営デザイナー」とか「芸術起業家」とよぶべきかな?

 「人間の幸せや喜びにつながるものが独創」と定義するなら、原発なんか「危険」「醜悪」、それこそ独創の反対にいる悪役ですよ。まったく。