「愉しい非電化」より

 「知ってるようで知らないこと・忘れていること」はたくさんあります。たとえば明治時代になるまで「電気」は使われていなかったこと。「え〜そうだっけ!それでも生活できたの?」と思う人がほとんどでしょう。私もそうでした。
 「電気が足りなくなりますよ! 怖くないですか?」と脅かされ続けてきた三月以来の日々。

 「この冬少し寒いと怖いから、原発なくしちゃ困ります。安全にすればいいんじゃないの?」と弱気になる人がまた多くなりそうな気がして気が滅入ります。

 電気なくたって大丈夫のシステムがあれば(バックアップとしてでも)、たかがお湯を沸かすのに原爆の兄弟を使う危険な選択など望まぬ人が増えるのではないでしょうか。

 電気を全く使わないということではなくて、暮らしに最低限必要なところは自給自足でまかなえるというのが、「独立した個人の生存システム」として望ましいのではないでしょうか?

 大震災前から「非電化」の考え方でさまざまな非電化機器を発明してきた方がいます。以前のブログ「月3万円ビジネスならできる」で紹介した「非電化工房」代表の工学博士藤村靖之さんです。

 藤村先生は実際の家で、様々な非電化製品をを使って効果を検証し、誰にでも公開しています。

 実は私も、非電化冷蔵庫をはじめ、それらの非電化製品や非電化住宅などをぜひ見たいと思いまして、那須にある非電化工房を1月に訪問しようと予約しました。

 今日は、藤村先生の著書『愉しい非電化』より「非電化の意味論」という章から抜粋してご紹介したいと思います。

 これから「電気や銭金の脅しに負けない強い気持ち」をつくるためのキーワードがいっぱいです。

 一人ひとりが「たくましさ」をとりもどそう!


ホドホド快適

 「電化と非電化、どちらがいいか悪いか?」というつらい選択ではなく、「電化と非電化愉しい方を選ぶ」という考え方はいかがでしょうか?貧しい昔に戻るのではなく、新しい豊かさを実現する、そのための選択肢の一つとしての非電化という考え方です。

ローカル化

 足りない部分を広域で補います。環境と雇用を地域レベルで両立させます。人と人とが、人と自然とが共存して、持続的に平和に生きる社会をめざします。ローカル化と相性がよいのが非電化です。ハイテックではありませんから、一部の先進国・先進企業でなくても、後進(?)の地方でも実現できます。

消費者参画

 非電化製品は、自分で作りやすい、直しやすいという点で、消費者参画型の状況を生み出しやすい側面があります。消費者と生産者の心の距離も縮まるかもしれません。

捨てない文化

 「愛着が湧いて捨てたくなくなる商品」「壊れても直せば長く使える商品」「捨てても土に戻る商品」これが、環境問題を生じさせないモノ作りの考え方といえそうです。

健康と環境を守る

 非電化製品は自然の素材を使い、自然の環境に依存します。「ボタン一つで」というわけにはゆきませんから、ホドホドの運動を伴います。

プロセスを愉しむ

 1960年以降、寸暇を争うようにして働いて私たちは高度経済成長を実現しました。過労死は勲章と褒められた異常な時期も経験しました。そして自由な時間をゆったりと過ごしたい気分に今はなっています。

まずはムダをなくす

 ムダな負荷や不必要な用途はそのままにして「原発は不安全だから太陽電池」のような(上滑りな)議論が先行しがちです。太陽電池も同じく強力であるがゆえの議論でしょう。幸いなことに非電化は非力ですから、「まずはムダをなくして」という正論を思い起こすきっかけになりそうです。

リープ・フロッグ(跳び蛙)

 ブラウン博士の「リープ・フロッグ理論」とは、こうです。工業国の技術は、エネルギー多消費型・化学物質依存型の側面が強く、環境・安全の尺度で見ると、決して先進的ではない。こういう技術の移転によって、発展途上国が「豊か」になろうとしている。「南北問題」の根源がここにある。発展途上国はそんな「後進技術」を真似する必要はない。工業国よりも先進の(つまり環境を悪くしない)技術を初めから導入してしまえばよい。そうすれば、経済発展と環境保全は矛盾しない工業国よりも(技術は)向こうに跳んでしまう・・世界中の人が「なるほど!」と膝を打ちました。しかし15年の間全く実行されていません。・・・

 リープするには発明が必要。しかし発展途上国は発明が苦手。
 
 ・・・非電化製品を先進工業国の発明家が発明し、途上国の起業家が作って売る。途上国に産業と雇用が生まれますが、この産業は環境負荷が小さい産業です。自国で十分に実用化してから先進工業国に輸出する。貧富の差が縮まり、先進工業国の環境も良くなっていいと思うのですがいかがでしょうか?

ソーシャル・アントン・プレーナー

 ソーシャル・アントン・プレーナー(あるいはスロービジネス)の経営スタイルは、ベンチャー起業家と対極です。ベンチャー起業家は成長ビジネス・先端技術・流行技術をテーマとしますが、ソーシャル・アントン・プレーナーはQOLビジネスやフェアトレード、地産地消などをテーマとします。ベンチャー企業家がスピードを身上として弱肉強食の世界の覇者を目指すのに対して、ソーシャル・アントン・プレーナーは消費者との共感を身上として、無理せずゆっくり愉しみながら、いい社会の実現を目指します。

参考
 発想のヒント
 テクテクノロジー革命
 月3万円ビジネスならできる