お猿のまんま

 吉本隆明さんは亡くなる少し前、こんなことをある週刊誌に載せていました。「脱原発は、人間が猿から別れて発達し今日まで行なってきた営みを否定することだ」と。「いや、そうじゃないさ」と草葉の陰でつぶやくドイツの児童文学者がおりました。
 その人の名はエーリヒ・ケストナー(1899年2月23日 - 1974年7月29日)

 美智子皇后も愛読されたという彼の「人生処方詩集」には、「人類の発達」という詩がありました。

 →ケストナーと美智子様

 私は日本人ですが、吉本さんよりケストナーの方が「ホントにそうだよな。。。」と思えます。

 皆さんはどうですか?

 猿に堂々と自慢できる世界だと思ってらっしゃいますか?


 (「猿の惑星」より)

人類の発達

むかしやつらは毛むくじやらで 兇悪なつら構えで
樹の上にこしかけていた
そのうちやつらは原始林からおびき出され
世界をアスファルトで舗装して
三十階まで積みあげた

今じゃやつらは蚤にも喰われないで
スチームのとおった部屋にこしかけている
やつらはいま電話のそばにこしかけている
そしていまだに樹の上のあの時代と
そっくり同じ調子でしゃべっている

やつらは遠くを聴く やつらは遠くを見る
やつらは宇宙と接触を保つ
やつらは歯を磨く やつらは現代を呼吸する
地球はおびただしい水道を持った
文化的な星だ

やつらは郵便物を管で発射する
やつらは微生物を捕えて 培養する
やつらはありとあらゆる快適さを自然に与える
やつらは斜に天へ翔けあがる
そして二週間もそこに滞在する

やつらの消化に余るものは
加工して綿にする
やつらは原子を分離させる やつらは近親相姦を矯正する
そしてやつらはスタイルの研究によって
シーザーが扁平足であったことを確認する

かくてやつらは頭と口で
人類を進歩させた
しかし一旦 目を転じて
              
明るみで眺めると やつらは畢寛(ひっきよう)

いまだに むかしの猿だ

参考
(ケストナーを引用しているブログ)
 変てこりんなお話
 ケストナー『合成人間』
 発想のヒント
 元気だそうよ!高校生
 ケストナーと美智子様
(猿のブログ)
 「猿の惑星」外伝