狐と狸の化かし合い

 facebookの使われ方にびっくり!今朝のNHKニュースを見て軽いショックを受けた方も多いのではないでしょうか?学生も企業も就活に利用とは。。。
 ニュースで伝えられていたことはこんなことです。

2012.4.19 
朝のNHKニュースより編集

 最近多くの企業は、就職希望の学生のfacebookを細かに調べ、本人の性格や考え方、交際などについて「本当のところ」をさぐろうとしている。

 たとえば、ある女子学生。面接では静かでおとなしい雰囲気だったが、彼女のfacebookを見ると、友達の数は多く、自身の発言に対するコメントも数多く寄せられている。発言も前向きな感じだ。

 採用担当者はこの女子学生を、面接の印象とは違って、企画力ある前向きの積極的なタイプと判断した。

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 今度は学生側。企業がfacebookで調べることを予測して、友達の数を増やし、発言は前向き(を装い)、顔写真は「笑顔」に変えて、印象を良くする工夫をしている。

 最近では、学生に就職で有利なfacebookの使い方を教える商売もでてきたそうだ。

 いや〜たまげました!

 まさに「狐と狸の化かし合い」です。

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 「いや企業はだましてなんかいないじゃない」という声も。

 実はそこなんですが、最近私はこんな思いを感じています。

 零細企業の我が社でも今、少人数ながら求人をしておりまして、大学に送る募集要項の原稿を私が書いています。(人事部があるレベルの会社ではないもので・・・)

 どこの会社でも同じでしょうが、同業他社の初任給やら、その他の待遇やら、会社のアピールやら、どうしているかあれこれ調べます。

 びっくりするのは、皆、なんて「化粧」がお上手なこと!ということです。

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 人格的に高潔そうな社長さんが、社会貢献の理念を堂々と述べ、先輩社員たちは常にファイトにあふれ、笑顔で楽しそうに仕事をこなしている。

 背景はキレイキレイのオフィス。

 「みんなのために!」「夢と希望をもって!」「楽しい職場!」

 すこし規模の大きい会社では、リクルート専門の会社に依頼するので、どこも似たり寄ったりの、社会に貢献し、幸せあふれる会社風景が展開されています。

 会社を差し替えても同じに見えます。

 近頃の温泉旅館と同じです。(コンサルが同じなためか、みんな同じ感じ)

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 ということで、企業も学生も化粧しまくりです。

 それが悪いとは言ってないんです。

 元々女性は化粧が当たりまえですし、企業のホームページだって、それこそ化粧の極致みたいなものです。

 化粧しなければ寄ってきてくれないというのは、どこでもだれでも一緒にもっている人生の障壁です。(良い意味でも)

 しかし、facebookに日々書き連ねることさえも、他人の視線に合わせて「化粧」しなくてはいけないのかと思うと、何か慄然としたものを感じます。

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 facebookを企業宣伝に使おうとしている人は多数います。私だってそういう気持ちが全くないわけではありません。

 でもそれは、あくまでも個人や自分の会社としての芯があって、それをより良く理解してもらいたいという意志が必ずあると思うんです。

 もし人受けをよくするためだけに、自分の芯ではなく作り物の芯をもとに書き連ねようという人が増えたら、大変な「自己欺瞞の世の中」になってしまうと思うんです。

 それは、化粧した自分ばっかし鏡で見ていたら、自分の顔がもともと何か分からなくなってしまった、という世界です。

 そんな装置にfacebookというものが成り下がるなら、人間性を貶める恐怖のウィルスになってしまうのではないでしょうか。

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 もっと怖いのは、企業採用担当者が人をどこまでものぞき見しようとすることです。

 これを、営利目的(自社にとって有利に運ぶため)で行おうとすることです。

 ある会社の経営者は社員のfacebookを日々細かくチェックしているらしいです。

 これでは、まさに「監視カメラ」に囲まれた社会で暮らすに等しい結果になるのではないでしょうか。

 私は、社員のfacebookは絶対に見ませんし友達登録などもしません。(別な必要上、専務だけは例外ですが)

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 ジャスミン革命をもたらした、個人の自由を拡張する社会的装置facebookが、権力者のための監視装置、あるいは権力者にこびるための化粧道具にならぬことを祈るだけです。

 おおげさかもしれませんが。。。

 あ、そうそう。会社の魅力を伝えるにも、みんな同じバラ色のキレイキレイだけでなく、泥臭くても本質的なことをきちんとアピールできるようだといいんですがね。

 仕事に対する価値観が、社会でもっともっと多様化していかないとだめなんでしょうね。きっと。