若者ほど「脱原発」に消極的?

 若者ほど「脱原発」に消極的とはびっくりです!逆だと思っていました。未来の安全や子供達への影響をより心配しているのは高年層より若年層だと思っていましたが。。

衝撃的なアンケート結果

 10日くらい前に、河北新報で共同通信社による「世代別原発比率アンケート」の結果を見ました。

 驚きです!若年層ほど原発支持者が多いとは。。。

  記事全体はこちら→世代別「原発比率」.jpg 直

 これから子づくり、子育てをする世代が、こんなにも原発に対して好意的(?)とは想像もしませんでした。

 (男女比まで明らかになってれば、また違った傾向も見えるかもしれませんが)

 そういえば先日ブログに書いた高校生の原発意見動画投稿サイトも似たような傾向があったな、と思い出しました。

  →原発を議論 高校生がHP開設

 どうしてなんでしょう?

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閉塞した経済が原因なのかもしれない

 そんなところへ昨日、朝日新聞にはこんな記事が載りました。

 朝日新聞 2012.8.27 「若者はかわいそう」って本当?〈ぼくたちの失敗〉より抜粋

 東京大名誉教授(政治学)の御厨貴さん(51年生まれ)は、数年前から教室で「身が震える思い」をすることがあるという。
 「戦後責任をどう考えるかという試験の設問に、『いい加減にしてくれ』という回答が増えてきた。就職もままならず、年金など将来の不安が大きい。こんな社会を作って失敗したのはあんたたち世代だろう。そのうえ我々に歴史の責任を問うのか。そんないらだちでしょう」

 団塊ジュニア(71〜74年生まれ)や続くロストジェネレーション(72〜82年生まれ)には、「団塊世代は高度成長の果実を独占し、年金や財政破綻(はたん)など、膨大な負の遺産を次世代に残した」という認識が浸透している。

 「公共事業は将来世代への投資という側面もある。自分たちが若い時は公共投資で潤った世代が、将来世代のために投資しなければならない時は、社会保障優先を言うんです。年金が心配なんでしょうが

 なにか、若年層がもつ「閉塞し続けている経済」への幻滅感が、このアンケートの背景になっている気がします。

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若年層の思いを代弁
 
 私なりに、若年層の思いを想像してみました。(間違っているかもしれませんが)

 「そりゃ〜原発ない方がいいに決まってる。だけどそれで経済が失速したらいったいどうなるんだ!」

 「大学出たって勤める先もない、勤めても正社員になれない、正社員になっても安定した職場なんてない」

 「ぎりぎりで暮らしている私たち。やっとマンションを買ったばかりなのに、もし失業したら家族はどうやってくらせばいい?」

 「安全も大事かもしれないが、私たちには現実の生活の方がもっと大事だ」

 「それに日本の科学技術力をもってすれば、原発の安全性は十分保たれると思うし」
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なぜこんなに変化を怖がるのか?
 
 私にはとても失望感があります。

 「脱原発」から生じる「新しい産業」への期待と挑戦は、どうしてこんなにも弱いのでしょうか?

 「核の廃棄物処理」について知識は十分なのでしょうか?

 放射能がなぜ怖いのか、生命科学的な知識は十分なのでしょうか?

 行きすぎた効率至上主義による、行きすぎた市場経済こそ現代の経済問題の根本であるとは思わないのでしょうか?
 
 もし知っていたり、思っていたとしたら、なぜこんなに変化を怖がるのでしょうか?

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私たちの責任と希望のありか

 私たち世代が徐々に「野性」を失い、牙のない若年層を育ててしまったのかもしれません。

 とても「怖がり」や「日和見」が多いような気がします。

 そうはいっても、比率的には少ないが「脱原発」の意識が高い若者たちもいます。

 彼らに期待するしかないのかな〜。

 なんだか情けない。。。

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まちがった出発点

 マスコミの煮え切らない報道、隠蔽のせいか、若者はじめ、日和見傾向の人々は間違った前提で「原発問題」を考えている気がします。

 そのひとつは、「原発がなければ電力は不足する」という思い込みです。

 もうひとつは、「原発がなければ電気料金が上がり産業は海外シフトで空洞化する」という思い込みです。

 ほんとにそうなら、検討の余地もあるでしょうが、そもそも嘘のようです。

 関心が高くて、ネット上から自分で情報を探し「自分頭」で判断する人なら、とうに承知のことですが、念のため資料を貼っておきます。

 資料はこの本から引用させていただきました。(とてもわかりやすい本です)

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「原発がなければ電力は不足する」という嘘

 今年だって猛暑の夏ですが、原発たった二基しか動いてなくても電力余っています。「いったいどういうこと?」って思わない人はいないのではないでしょうか?

 もともと、原発なくても足りていたのです。

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「原発がなければ電気料金が上がり産業は海外シフトで空洞化する」という嘘

 いったい、企業のコストのうち電気料金の占める割合はどれくらいでしょう?

 わざと大きく考えて、仮に電気料がコストの10%を担うとします。

 もし電気料金が10%上がったとしたらどうなるでしょう?

 200円で販売する製品の今までのコストが100円だとしたら、値上げ後のコストは101円です。

 この1円を削減できないほど脆弱な企業なら競争力自体が疑われるでしょう。

 こんなのより、はるかに影響が大きいのは、まずレアアース等を含む原材料費。

 さらに最大の影響があるのは「円高」であるはずです。

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海外移転を検討すると答えた企業は13%

 実際、今日の朝日新聞にはこんな記事が載りました。

朝日新聞 2012.8.28

原発比率15%支持が4割 大企業にロイター通信調査

 ロイター通信が日本の大企業400社を対象に2030年の原発比率について聞いたところ、「15%」を支持した企業が39%と最も多かった。「20〜25%」は25%、震災前に政府が目指していた「45%程度」は6%、震災前に達していた比率「26%程度」は4%。一方「0%」は19%の支持を集めた。27日に報じた。

 6日から21日にかけて調べ、268社から回答を得た。原発比率が下がることで「経済成長が低下する可能性が高い」と答えた企業は53%にのぼったが、「特に変わらない」と答えた企業も30%だった。また、原発の再稼働にあたっては85%が、厳しい安全基準を求めていたとしている。
 電気料金の値上げが続いたらどう対応するかを複数回答で尋ねたところ、69%の企業が経費削減を挙げ、36%がより安い電力供給者を探すと答えた。生産拠点の海外移転を検討すると答えた企業は13%だった。

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だまされることも罪

 まちがった前提から出発しているということは、頭が痛いのに腹が痛いと考えて治療を考えてるようなものです。

 「だまされることも罪」と言った方がいます。

 故伊丹十三氏の父上、伊丹万作です。

ちくま学芸文庫「伊丹万作エッセイ集」(朝日新聞から転載しました)

戦争責任者の問題

 さて、多くの人が、今度の戦争でだまされていたという。(略)だまされているということもまた一つの罪であり、昔から決していばっていいこととは、されていないのである。(略)
 「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである。