「マニフェストに反対」じゃなくて、「反対のことを宣言するマニフェスト」なんです。
◆ニワトリの記憶力
「強い日本を取りもどします」「みなさんに安心の年金をお約束します」「国際問題に毅然として立ち向かいます」「経済成長を○%アップさせます」・・・
そして、どうなるか?
何度繰り返しても、そのたびに忘れてしまう、この愛らしくも愚かな「私たちの記憶力」
◆「何々をしません」だけ
いっそ、「反対マニフェスト」をつくった方がいいと思うんですよ。
それは、「私たちは何々をします」ではなくて、「私たちは何々をしません」ということだけのマニフェストです。
これなら、結果もわかりやすいし、すくなくても暴走だけは食い止められるという安心感もあるんじゃないですか。
◆宗教の「戒」と同じ
「原発は今後つくりません」「原発再稼働はさせません」「憲法九条は変えません」「自衛隊は軍隊にしません」「TPPは最低10年間締結しません」
こんなふうに、すべて「〜〜はしません」だけ、しかも最小限の約束だけでマニフェストをつくるのです。
私は、これって「人類を致命傷から救う」最高の予防薬になると思うんです。
人類を救うための「宗教」は、まさにこの「戒」が根本になっています。
これらはすべて「〜〜してはならない」と宣言しています。
◆「我が信条」にびっくり
企業だってそうです。
「私たちはともに豊かな未来を創造する・・・」とかカッコイイ空事を延々と書き連ねる「夢物語経営理念」よりも、「私たちは〜〜をしません」という「戒律型経営理念」の方がはるかに説得力があります。
ジョンソン・アンド・ジョンソンの経営理念「我が信条」は、「戒律型」の典型でしょう。
特に最後の段は、思わず目をパチクリしてしまいます。
これがあの「超株主中心主義」の「アメリカ生まれの企業」なのか?と。
なんと、「株主への配当は最後の最後ですからね」と宣言しているんです。
我々の第四の、そして最後の責任は、会社の株主に対するものである。
事業は健全な利益を生まなければならない。
我々は新しい考えを試みなければならない。
研究開発は継続され、革新的な企画は開発され、失敗は償わなければならない。
新しい設備を購入し、新しい施設を整備し、新しい製品を市場に導入しなければならない。
逆境の時に備えて蓄積を行なわなければならない。
これらすべての原則が実行されてはじめて、株主は正当な報酬を享受することができるものと確信する。
◆日本にも出現!
私もちっちゃな会社の経営者ですから、経済界の一員ではあります。
だけど、昨今の原発問題に対する大企業経営者たちの偏狭で幼稚な「効率教信者」ぶりを、これでもか!と見せつけられては、もう経済界に対して幻滅しかありません。
それで、何か別な方向はないのかな〜と模索してこんなブログを書き続けたり、「しごとにアートの心をとりもどそう」ということで「あったかギャラリー」なんかを企画したりしているんです。
ところが!昨日の朝日新聞で、少し?尊敬できる大企業の経営者を発見したんです。
◆勇気ある経営者
あろうことか、あの原発企業「三菱グループ」の化学薬品会社が、必然的に原発反対に到るであろう、会社の新たなシステムを宣言したのです!
企業の社会貢献をかけ声だけに終わらせないために、総合化学大手の三菱ケミカルホールディングスが、「KAITEKI(カイテキ)」と名付けた新しい企業価値の向上に挑戦している。地球や人類の未来に貢献する企業活動を経営の中心軸に据え、点数で評価。2015年度に満点をめざそうという改革の試みだ。
「三菱系列」ですよ!私は目を疑いました。それで、経済同友会での社長の発言をチェックしました。その発言について書かれたブログを引用させていただきます。
・・・一方、小林喜光三菱ケミカルホールディングス社長は「化石燃料も(原発のエネルギー源である)ウランもいずれは枯渇する。縮原発・脱化石燃料を目指さないと人類の未来はない」と主張。
嬉しいじゃないですか!大企業グループにもこんな経営者がいたんですよ!
◆基準外の事業はしない
小林社長の言葉を記事から引用します。「・・・しない」まさに「戒」ですね。
・・・評価の手順はこうだ。自社の事業がまず「サステイナビリティー(環境・資源)」「ヘルス(健康)」「コンフォート(快適)」に当てはまるかどうか。どれにも当てはまらない事業は手がけない。各基準とも100点満点で評価する。
なぜカイテキ価値を思いついたのですか。
「・・・会社に集う共通の旗印がほしかった。企業価値は時価総額だけでは測れない。地球と共存する経営をしなければ、企業が存在する意義はない。もうける体力と技術力に加え、心の軸がなければ、企業は持続しない」
多くの企業がCSR(社会的責任)活動に取り組んでいますが、違いは。
「社会に安全な製品を提供し、法律を守り、環境を破壊せず、職場のダイバーシティー(多様性)にも努める。それらすべてがMOSの評価項目になる。もうけの一部をCSR活動に回し、それを免罪符とするのでは都合が良すぎる」
原子力帝国でこのような方針を打ち出すのは、よほどの勇気が必要だったことでしょう。
小林社長は「金を稼ぐ人」ではなく、「人を導く人」だと思います。
彼を見習い、たとえサラリーマン社長でも、「顔無し株主の奴隷」に成り下がらず、「人間としての恥の倫理」について、もっと責任感を持たねばならないと思うんです。
参考
人間の香りがする会社