小さいことも素晴らしい!

 「小さいことは素晴らしい!」数年前まで私はこの言葉が逆説に思えていました。今では一文字変えて「小さいことも素晴らしい!」というのに賛成です。

公園のすべり台で立ち話

 田舎に住むじいちゃんが、近くの公園のすべり台で小学一年生の孫のサンペイとこんな話をしている。

 サンペイはすべり台で遊びながら、じいちゃんと適当に付き合っている

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小さい方?大きい方?

 「サンペイは小さいのと大きいのとどっちが好きじゃ?」

 「ぼくはぜったい大きい方がいい!ケーキだって大きいほうがいっぱい食べられるし、鯉のぼりだって、隣のタロウ君ちのほうが大きくてカッコイイよ」

 「ま〜、わしも最近までそう思ってたんじゃ。だから仕事も家も車もなんだって大きい方がいいってな。でも最近はそうも思えなくなってきたんじゃよ」

 「じいちゃん、それはね、きっと『歳のせい』ってやつだよ」

 「おいおい、どこでそんな言葉を覚えたんだい。じいちゃんは歳はとっても頭は年々若返ってきた感じがしているよ。今まで頭にろくに油も差さずに仕事だけに突っ走ってきたからな〜」

 (しばし感慨にふける)

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クラスの人数

 「じいちゃんは小さいのがどうしていいと思うの?」

 「それじゃ二つだけ話そうか」

 「早くしてね、タロウ君と遊ぶ約束してるんだから」

 「ハイハイ。まずひとつめは学校のクラスの話じゃな。サンペイは10人のクラスと50人のクラスどっちがいい?」

 「う〜ん、大勢いると楽しそうだけど、先生一人だけじゃみんなにきちんと教えられないし、そうすると勉強つまらなくなるので10人に賛成!」

 「そうそう、クラスが大きくなると一人ひとりの面倒が見きれなくなってしまうんじゃ。それじゃまずいということでいろんな規則が増えたり、先生も決まりきったことだけしかできなくなる。だから10人の小さいクラスのほうがいいというわけだ。これは学校だって仕事だって町だってみな同じさ」

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大きい家と小さい家

 「なるへそね。もうひとつは?じいちゃん」

 「もうひとつは、そうだな〜家の話をしようか。サンペイのお父さんお母さんも借金をして立派な家を建てたばっかりだからちょっと気が引けるんだが。。。参考までに聞いておくれ」

 「小さな家より大きい家のほうがいいんでしょう?家の中でかけっこだってできるしさ、じいちゃん」

 「ま〜、そのとおりではある。だけどこんな考え方もあるぞ。よいしょっと」

 (どう話そうかとしばし悩み、間をとるためにベンチに座る)

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家の話とオモチャの話

 「たとえばじゃ、サンペイならどっちがいい?とっても広くて大きいけど、どこにでもあるような家と、とっても小さいけど他にはないおもしろいものがたくさん付いている家」

 「う〜ん、その小さい家はみんなで暮らせるの?」

 「もちろん。とっても狭いけど、みんなが暮らせるようにいろいろと工夫している家さ。工夫も住む人が考えるんじゃがな」

 「じいちゃん、それって、大きくて立派で、もうできあがっている飛行機のオモチャがいいか、小さいけど自分で組み立てる飛行機のどっちがいいかってことと同じかな?」

 「う〜ん、ま〜そんなもんかな」

 「ぼくら子どもは、小さいけど自分で組み立てる飛行機がぜったいおもしろいよ!それにもしこっちが安かったら、お父さんにもっともっと買ってもらえるじゃない」

 「そうそう。小さいとお金が余りかからないし、そのぶん家の造りとか家具とか、それと毎日の食事とかにも贅沢できるんじゃよ。かえって高級な暮らしができるんじゃな。かかるお金が十分の一の家なら十棟も建てられるんじゃぞ」

 「そうなんだ!ぼくたちお小遣いがいつも足んない子どもたちにはぴったりそうだね。ついでに作って遊ぶのも好きだし」

 「それだけとは限らないぞ。大人でもりっぱ(?)な会社にいて、大きな家に住み、お金にも困らないけど、なんか楽しくないな〜という連中がけっこう多いんじゃ。そんな連中には逆に小さいのが薬になるんじゃよ。自分の居場所、それもカッコイイのができたってな。サンペイの押し入れ秘密基地みたいなもんじゃわい」

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大人の癖

 「それなのに、どうして大きいものばっかし欲しがる大人が多いのかな?」

 「それがおとなの癖と言えるのかもしれないんじゃ。その原因の一つは、君より大きいぜ、と自慢したいんじゃな。もうひとつは、何でも大きい方が楽しいことより上なんだ、大事なことなんだと思い込んでいるんだな。たぶん」

 「じいちゃん、それって恐竜みたいだね。どんどん大きくなって絶滅したんでしょう。でもとても小さかったほ乳類の先祖は生き延びたんでしょう。図鑑で見たよ。それと同じかな?」

 「う〜ん、ちょっと行き過ぎかな。大きくなろうということが、人のやる気を起こすもとにもなるし、大きくないとできない仕事だってある。要はそればっかしとか行き過ぎとかがよろしくないんじゃ」

 「もし今より少しでもみんなが『小さいこと』に魅力を持てたとしたら、無理のない生き方で楽しい社会になるはずと、じいちゃんは思っておるんじゃよ」

 「それでな、じいちゃんは『小さいこと』の楽しさ探しを始めたんじゃよ。みんなに見せてニコッてさせたくてな。みんなもできそうなやつをだ」

 「これからの話は、ちょいとサンペイには難しいな。さ〜、今日はこれで終わりだ。タロウ君と遊んでおいで」

 「は〜い、またね、じいちゃん」

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 →「小さな家」の大きな夢