民話「さとり」と現代

 噂だけで円安・株高、景気が回復?さらにはtwitterの偽情報でドル急落。。。私にはとてもついて行けません。
 「風が吹けば桶屋が儲かる」は日本のことわざ。

 経済というものが「連鎖反応」であることをズバリ突いています。

 しかし風が吹いて桶屋が儲かるまでには、眼病みが増える→猫が減る→ネズミが増えるという実態変化と、そうなっていく時間的経過があります。

 現代の(金融グローバル)経済には実態変化も時間的経過もありません。

 「イギナリ」です!

 まるでスターのゴシップに一気に群がる芸能レポーターのような、腐ったものに一気に群がり寄せるハエのような、現代経済社会です。

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 この金融グローバルカジノ経済社会は、ニクソン時代に種がまかれ、クリントン時代にITを大いに利用して花を咲かせました。

 今や全世界で花をしぼませるな!と必死です。

 クリントン時代にはこんなふうに言われたものです。

 「大統領がくしゃみをしただけで株価が下がる」

 そして先日は「オバマ大統領がホワイトハウスの災害で負傷」というtwitterの偽情報で、ドルや株が急落したというんじゃないですか。

 一夜にして大富豪がただの人になったり、その逆だったり。

 個人の賭博者(人任せの投資欲張り人種)はかまいませんが、実体経済を主業務としている「普通の会社」がこんなシーソーに乗せられているなんて、不健全、危険にも程があります。

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 こんな民話を思い出しました。そして現代社会と似ているな〜と思いました。

さとり

 むかしむかし、あるところに、一人の木こりがおりました。

 木こりは山に小屋を立てて、まいにちオノをふるっては、木を切っています。

 あるとき、木こりが、「きょうのうちに、どうしてもあと一本、たおさねばなんねえ」

 むちゅうでしごとをしていると、とちゅうで日がくれてきてしまいました。

 「もうちょっとで、おしまいになるっていうに。・・・まあ、しかたがない」

 木こりがかれえだをひろいあつめて、たき火をしておりますと。

 ガサガサ、ガサガサ。

 クマざさをかきわけて、ひとつ目一本足のおやじさんが、どこからともなくあらわれて、火のそばにやってきました。

 そして、だまって手をあぶりはじめたのです。

 (なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん)

 木こりがそうおもっていると、ひとつ目のばけものがニタリとわらい、

 「いま、おめえがなにをおもったか、あててみようか。『なんだか、おかしなばけもんがでてきたな。やまんじいかもしれん』そう、おもったろう」と、いいあてました。

 (おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん)

 木こりがおもうと、ばけものがまた、「いま、『おれのおもうことを、みんなさとっている。さとりのばけものかもしれん』そうおもったろう」と、これまたいいあてました。

 (こんなばけもんに、かまってはおられん)

 木こりがにげだそうとすると、「おめえはいま、『こんなばけもんに、かまってはおられん』と、おもったろう」

 またまた、いいあてました。

 木こりが、(こんなばけもん、はやくかえればいいが)と、おもっていると、ばけもんは、「いま、『こんなばけもん、はやくかえればいいが』とおもったろう」

 さらにいいあてました。

 (これは、よわったことになったわい)

 木こりが、こまりきっていたときです。

 たき火の火のこが、パチーンとはじけとんで、ばけものの目にとびこみました。

 ばけものはとびあがると、「あちちちちっ! 人間て、おもわんことをするもんだ。あぶなくて、こんなところにはおられん」

 あわてて、山へにげかえっていきました。

おしまい

 木こりは私たち、「一つ目のばけもん」は「金融業界」(そこで使われているコンピューターかも)です。

 人の心理を読み、物事の連鎖反応を瞬時に予測し、何十手も先を読んで(読んだつもりで)、一瞬にして指示を出します。

 私たちが今や世界経済の原理と思いこみ、信徒のように仕えている「グローバル金融経済システム」は、人間が作った「コンピューターのばけもの」なのです。

 ところがそう簡単に天の問屋は卸さない。

 突然はじけた「たき火」の「火のこ」は、災害や予測不可能な情報です。

 リーマンショックも3.11も、twitterの偽情報もみんな「火のこ」です。

 実は、私たちが神のようにあがめ奉るこの「ばけもの」は、民話のとおり「火のこ」ごときですぐ逃げ帰る、とっても弱くて卑怯で信用できない「ばけもの」なのです。

 こんな「ばけもの」を信じてシーソーゲームを続けている私たちって、なんて情けないんでしょう。。。

 いいかげん、「人の世界に戻りませんか〜、うふっふ〜〜うふっふ〜ふ〜〜う〜〜」(井上陽水『夢の中へ』♪)

参考
 エンデが日本人に残した言葉